訪問ST(言語聴覚士)のツバメです。
最近、訪問リハについて質問されることが増えてきました。
そのなかで割と多いのが、経験年数についての質問。
どうやら訪問リハ=経験が長くないと働けない、というイメージが少なからずあるようです。
実のところ、訪問リハで働くのに「長い実務経験が必須」とは思いません。
僕は、病院勤務を1年で辞めて訪問看護ステーションに転職しました。(病院合わなかった…)
しかも当時STはいなかったので、部門立ち上げからのスタートです。それでもなんとかなりました。
訪問リハ求人は、経験3年以上での募集が多い。でもそれ以下でも働けます
訪問リハの求人票では「実務経験○年以上」などの表記も多いです。ひとつの目安としては3年でしょうか。
では、経験3年以下の人は、訪問リハで働けないのか?
結論から言うと、経験が3年以下でも訪問リハで働けます。
僕の実例も合わせて解説していきます。
たとえ経験年数がゼロでも訪問リハでは働ける
まず、ひとつ言えることがあります。
たとえ経験年数がゼロでも、訪問リハで働くことは可能です。なぜなら、法律で経験年数が定められている訳でないからです。
○年以上の経験がある人が欲しいなぁ。
経験年数って「最低限の基礎能力」が欲しいという、雇う側の都合です。
新卒で訪問リハに就職したという話も無くはないですし、1〜2年での転職ならゴロゴロいます。
経験1年で訪看勤務に転職した、僕の実例
僕は最初に入った回復期を1年で退職しました。非効率な業務に嫌気がさしたのと、看護部からのパワハラが主な要因です。
うう、次は訪問リハで働きたい!
そう考えたのですが、そうなると求人の「経験年数」が壁になります。
では、どうしていたか?
年数が足りなくても、問い合わせするのは自由ですよね。
訪問リハがやりたいので、話だけでも聞いてもらえませんか!?
採用側からしても、連絡を受けた時点で感じることはあるでしょう。例えば、「熱意」「やる気」「行動力」…。
そんなポイントをプラスに捉えてくれる人はいます。本当は、経験年数なんかより重要な要素だからです。
経験1年の僕が訪看に応募した結果
- 面接してくれた:4/4件
- 面接後、採用したいと連絡があった:3/4件
※どこも3年以上で募集してました
結局、3つの訪看から今の訪看を選んで入職しました。経験の少なさを熱意でカバーできたんだと思います。
経験年数が短いと、業務が不安じゃない? いえ、新しい場所では誰でも不安です
経験年数が短いと、訪問リハの業務に不安はないのでしょうか?
答えは、「ある」とします。
だけど新しい分野での不安って、誰でもありますよね。
そもそも病院リハと訪問リハはかなり考え方が違います。
むしろ、病院での経験が長すぎるとハンデにすらなり得ます。「考え方」が固定されるからです。
続いて病院リハと訪問リハの「考え方の違い」について掘り下げます。
病院リハと訪問リハでは根本の目的が違う。経験がそのまま活かせるわけではない
病院リハと訪問リハでは、そもそもリハ介入の目的に違いがあります。
病院リハの目的
- 機能改善と退院
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機能改善・退院。そこに向けてチームが動きます。もちろん、その後の生活も視野に入れますが、大きな目標は退院ですよね。
訪問リハの目的
- 実際の生活場面でのQOL向上
-
訪問リハは、実際の生活場面でのQOL向上が目的です。訓練だけでなく、生活がうまくいく為の「仕組み作り」が重要。家族との関わりも多くなります。
訪問リハでは「機能改善」よりも「環境調整・生活スタイル改善・家族指導」などの優先度が高いです。
理由は単純で、訪問ではリハが実際に介入できる時間が圧倒的に少ないからです。
介入できる時間の違い | |
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回復期病院 | PT・OT・STで毎日3時間まで=週21時間 |
訪問リハ | PT・OT・STで、多くても週3回=週3時間 ※1回40〜60分程度 |
訪問では、多くても週に3回のリハです。保険にもよりますが、1回の介入は40分〜60分。
POSでわけると、それぞれ週に1回ずつという感じです。
週に1回、1時間。その頻度で、病院でやるような訓練をやっても結果は出づらいです。
訪問リハでは、週1回の介入で「その人のQOLを上げるスキル」が必要です。そのスキルって、病院での経験で身に付くでしょうか。僕は違うと思います。
実際に、経験が長いPTさんが短期間で辞めていくこともありました。僕からすると「ウデに自信がある」がゆえに、考えの修正が難しいよう見えました。
訪問リハに必要なスキルは「訪問リハの現場」でしか身に付かないはず。
病院と訪問では担当する疾患にも違いもあり。神経難病の方を初担当
実際に訪問リハで働きだして、まっさきに思ったことがあります。
…あれ。僕、病院で神経難病の担当経験がない!
担当する方の疾患の変化(僕の場合)
病院:脳血管障害の方が大半
訪問:パーキンソン病など神経難病の方をはじめ、様々
僕がいた回復期は、入院患者の大半が脳血管障害の方。これは病院自体の特徴でした。
今の訪看ではパーキンソン病、ALSなどの神経難病や、がん末期、小児など様々な方を担当しています。逆に脳血管障害の方は少ないです。
経験が浅いと急変対応などが不安では? それは誰でも不安です
訪問先での急変などが不安だし、経験年数は長いほうがいいのでは?
急変などのトラブル対応が必要な為、訪問では「経験が浅いと不安」というイメージもあるでしょう。
しかも、訪問リハでは近くに頼れる先輩もいない。確かに不安です。
でもこれは臨床経験が浅いから不安なんじゃなくて、「急変対応の経験が少ないから不安」なんです。
これも現場で経験を積むしかないスキルです。急性期でバリバリの人とかはまた違うでしょうが。
なにより、訪問リハもチームで動きます。何か著変があれば看護師と連絡をとりますし、指示を仰ぎます。
「訪問リハ=個人の判断に全てが委ねられる」という訳ではないです。
少なくとも僕のステーションは、急変・異常時にはまず看護に連絡します。
訪問リハに必要な経験年数は3年あれば十分。それ以下でも大丈夫
以上、今回は訪問リハの経験年数について考えてみました。
繰り返しになりますが、訪問リハへの転職は「経験年数3年」あれば十分だと思います。
「3年」である理由は「その条件で求人募集しているとこが多い」というだけです。
人によっては3年以下でも大丈夫です。僕がそうでした。
絶対に必要な経験年数なんて無いと思います。
僕は訪問リハの仕事が好きなので、地域で働くセラピストさんが増えて欲しいと思っています。
STさん向けに実施した「職場の本音アンケート」でも、訪問リハの満足度は高かったですしね。おすすめです。
他にも、訪問リハに関する記事をアップしています。参考になると嬉しいです。
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