訪問STのツバメです
今回はずっと掘り下げようと思っていて、なかなか筆が進まなかったテーマを書きます。
STの仕事のストレスと体調不良についてです。
僕は最初に働いた病院が合わず、1年ちょっとで退職しています。なんでそんなに早く退職に踏み切れたかというと、体調を崩したからです。メンタルがやられました。
その経験から出した結論は「ストレスで体調不良になってしまったら一旦仕事から離れた方がいい」ということです。少し無理をした結果、僕は一度ST自体を辞めるギリギリまで落ち込みました。
特に若手STのみなさんには「僕と同じような状況」にはなって欲しくないです。なのでこの記事では、僕がどんな体調不良を経験したのか等、詳細を解説します。
重い話かもしれませんが…体調に不安のあるSTさんの参考になると嬉しいです。
筆者が経験した体調不良の症状について解説
前述の通り、僕もSTの仕事がきっかけでメンタルを病みました。
でも、そうなるまでに「おかしいな」と思うポイントはたくさんあったんですよね。でも勘違いだと思いたくて放置しました。
なのでここでは、僕が実際に心療内科で「うつ」の診断を受けるまでに、どのような症状があったのかを解説します。
僕が実感した精神的な異常
精神的な異常
- うまく笑えない
- 無気力(特に朝起き上がれないカンジ)
- 強迫観念(何度も手を洗うなど)
精神的な異変は、もしかしたら他にもあったもしれません。正直なところ、当時の記憶が曖昧なんです。頭がぼーっとして回ってなかった感じ。
ハッキリ覚えているのは、働きだして1年が過ぎたころ、急に朝起きる辛さが増したことです。眠くて起きれないのとは少し違う感覚でした。仕事の日は使命感からか動くことができるんですが、休みの日が辛かったです。朝目が覚めても、なんだか体が重くて動かない。
僕が実感した身体的な異常
精神的な異常も問題ですが、絶対に見逃さないで欲しいのは身体的な異常(症状)です。
僕は下記のような異常がありました。もし、同じような症状が多くあるならば要注意。
- 異常な体重減少
- 異常な肌荒れ
- 食欲不振
- 閉鎖空間での動悸
- まぶたの痙攣
- 口内炎多発(同時に10個とか)
- ヒステリー球(嚥下時の違和感)
様々な異常を経験してしまいましたが、決定的だったのは「口内炎の多発」です。
当時、上記の症状を全て見ないふりしていました。でも、口内炎だけは「まともに喋れない」ので、仕方なしに歯医者に行くことにしたんです。レーザーで患部を焼いてくれる歯医者があって、少しはマシになるだろうと思いました。
その口内炎治療のときの歯医者さんのリアクションで、自分の体がおかしくなってると実感したんです。
…お身体、大丈夫ですか? 普通はこんな大量の口内炎はできませんよ。
すごく心配そうな顔で言うんです。先生は、ベーチェット病などの疾患も疑われてました。
結局、大きな病気はなかったけど、心療内科で「うつ」と診断されました。軽度だったのが幸いです。薬も出してもらって、治療していくことでだいぶ落ち着きました。
少し症状が落ち着いたら、頭が回るようになりました。逆に言うと、回復してきて始めて「今まで頭が回ってなかったこと」に気付きました。
仕事がストレスだった理由を解説
続いて、そもそもなぜ僕が「体調不良になるほど」仕事にストレスを感じていたのか。
その点もぶっちゃけて話します。
ST業務のプレッシャーがエグい
まず、STの仕事って控えめに言っても責任重大じゃないですか。リハビリの評価や訓練次第で、他者の人生が左右される。そう思うとすごいプレッシャーでした。
嚥下リハに至っては「誤嚥」や「窒息」など命に関わる判断も迫られます。専門学校を卒業して1年目のヒヨッ子に、このプレッシャーは単純にキツかったです。
僕はもともと一般企業の出身で、割とブラックな企業で働いた経験もあります。それでも、STの仕事はかなりストレス度が高いと感じました。
人の人生を左右する決断なんて、そうそうないですからね。
- 嚥下のプレッシャーがエグい
- 命に関わる判断もDr.などから丸投げされる場合がある
- 若手の頃は訓練内容に自信が持てない
- 担当する人の人生を左右する仕事
STの悩みについては別の記事でも解説しています
病院という組織が合わなかった
2つ目の理由として、僕にはどうも「病院という組織が合わなかった」と言えます。
病院勤務の経験がある方には共感してもらえる「かも」しれませんが、病院って良くも悪くも特殊で融通の効かない組織ですよね。ルールに縛られて思うように訓練が行えなかったりもしました。
また、僕がいた病院はやたら看護部がリハに対して高圧的でした。例えば、リハの新人は業務時間後に呼び出されて理不尽な説教されたりもします。STのリハ内容についても直接ボロクソに言われます。もちろん他職種なので、見当違いな意見も多いです。でも反論はできません。専門職のプライドなんてあったもんじゃないです。そしてそれが当たり前という空気。
僕はああいう場所ではやっていけませんでした。
僕に病院勤務が合わなかった理由は別の記事でも解説してます
STは病みがちな職種?
なんかSTって病んでる人多くない?
もし誰かにそう聞かれたら、僕は以下のように答えます。
病んでる人は多いと思うし、理由もわかる。僕も病んでました。
そう、病んでしまうSTは少なくないのです。なので、もし今STの仕事に疲れてしまっている人も「自分だけではないんだ」と、少しだけ安心して欲しいです。
実際、SNSで等でも「仕事に疲れた」「ストレスで休職」などの投稿をしているSTはよく見かけます。PTOTよりも多いように思えます。
ストレスで体調不良になった他のSTさんの例
僕の周りにも体調不良をきたしたSTさんが何人かいます。
ちょっとだけ、概要を紹介します。
原因不明の動悸・手の痺れが慢性化
「動悸」「手の痺れ」などの体調不良を訴えていたSTさん。たくさんの病院を回れども原因不明。
そのまま、事態は身体症状に対するオペ等まで発展するも、改善なし。
そして結局、職場を変えたら全ての症状が消失したそうです。
これもきっとストレス性の体調不良…ですよね。
仕事に行こうとすると腹痛、嘔吐してしまう
1年目早々から20単位がノルマの急性期。業務へのプレッシャーから、職場に行こうとすると腹痛・嘔吐。辛かったと思います。結局病院は辞めて、それからSTはやってないようでした。
ST自体辞めてしまうケースはとても残念です…
仕事中、悲しくもないのに涙が出る
同じ職場で働き続けていて5年目くらいの方。
ふとした時に「自分の意思と関係なく涙が出る」時期があったそうです。仕事はそのまま続けたけど、どう考えてもアレはおかしかったと。一歩間違えればどうなっていたか…という感じですね。
仕事のストレスで病みそうなときの対処方法
続いて、仕事のストレスが強いとき「どうするべきか」を解説します。
ちなみに「我慢する」「耐える」という選択肢は除外してます。自分の体を犠牲にしてまで、その仕事を続ける理由はないからです。
ストレスで体調崩したときの対処
- 職場の同僚・上司に相談する
- 部署変更など希望する
- 体調に問題があるなら受診する
- 休職をする
- 退職&転職する
職場の同僚・上司に相談する
もしかすると「業務バランスの見直し」等ができれば、仕事のストレスが軽減されるかもしれません。なので、自分が今限界にあることを上司に相談してみるといいかもしれません。
でもこれは、信頼できる先輩や上司がいることが前提になります。
僕の場合は上司から「相談自体を避けられる」パターンでした。
部署変更など希望する
部署や所属病棟の変更希望ができる職場であれば、まずは社内でのポジションを変更出来るように動きましょう。
同じ組織内でも、部署や病棟が変わると雰囲気や人間関係はガラッと変わります。それが、良い結果になることもあります。
例えば、同じ病院内でも「回復期病棟」から「訪問リハ」に異動し、ストレスが激減した先輩がいます。
体調に問題があるなら受診する
自分の体・メンタルに不安を感じる方は、病院を受診してみることをオススメします。
僕も受診をすることで、自分の状態を客観的に知れました。また、診断書を貰うことで「休職」や「退職」もスムーズになります。
リハツバメの記事を読んで、心療内科を受診しました。
自分が思っていた以上に、メンタルが限界だったことに気づき、しばらく休職することになりました…ありがとうございました。
メールをくれた方は、仕事のストレスで精神的に辛い状態が続いていたものの「病院に行く」という発想自体が無かったようです。
自分ひとりで考え込むと、視野も狭まり、行動も遅くなりがち。受診してみて「そこまで深刻じゃなかった」ならオッケーですしね。
生命保険の加入予定等がある人は受診を慎重に
心療内科受診についての補足です。もし、あなたに生命保険に加入する予定があるなら、注意が必要です。
なぜかというと、メンタル不調などで心療内科から診断書を書いてもらった場合、その後に加入する保険料が割高になる可能性があるからです。
とはいえ、受診を先延ばしにして症状が悪化しては元も子もないですよね。必要性を見極めて、受診を検討しましょう。
参考:GO!GO!ワンク「うつ病になったら保険に入れない?うつ病でも保障が出る保険は?加入可否~注意点を解説」
休職する
とにかく体を休めたい場合は、休職や退職をする必要があります。
しかし、ここで注意してほしいのは会社から「休職」を勧められたとき。
よくよく考えてみると、休職するだけでは根本的な問題解決になりませんよね。休職は復職後の「部署変更」や「体制の見直し」がセットでないと意味がないです。
実は僕も、退職を申請した際に職場から「休職」を勧められました。しかし、その後の復職に向けた対応はゼロ。結局、ストレスフルだった環境に、そのまま戻るように言われたんですよね。それで状況がよくなるとは思えず、退職を決意しました。
「しばらく休んだから、もう少し続けられるでしょ?」というような休職はマジで意味ないです。
休職の診断書をなかなか書いてもらえないケースもある
ストレス性の体調不良で、しばらく休職したい。その際に、心療内科などのドクターから診断書を書いてもらうことになるはずです。
でもここで、ドクターがなかなか診断書を書いてくれないというケースもあるので注意が必要です。
実際、僕が通っていた心療内科でもドクターによって意見の差がありました。
同じ心療内科のドクターでも対応が違った
心療内科ドクターA | 休職に否定的 「もう少しがんばろう」と言われました。 |
心療内科ドクターB | 休職に賛成 「すぐ休んだ方がいいです」と、診断書を作成。 |
通っていた心療内科は、曜日によって担当者が変わる感じでした。なので、休職に前向きなドクターに診断書を依頼。診断書をもとに、休職の手続きが進みました。
精神的に限界で病院に通ってたのに、ドクターから「もう少し頑張ろう」って言われたときは絶望しました。
僕はたまたま二人のドクターと話していたのでよかったです。あまり一人のドクターを過信しない方がいいです。
退職&転職する
休職でも問題が解決しない場合は、退職するしかありません。
もし、少しゆっくりする時間がとれるなら、転職までにゆっくり気分転換しても良いでしょう。
ちなみに僕は、転職した後はストレス性の体調不良が全て消失しました。その後、精神的にも身体的にも安定しています。どうやら、新しい職場の訪問看護ステーションは自分に合っているようです。
ストレスからくる体調不良は、環境が変われば改善する可能性あり。「職場が合わないかも」と感じる人は、早めの転職を検討してよいでしょう。
体調不良から転職するときの注意点
仕事のストレスで体調不良になった場合、無理して仕事を続けないのは鉄則ですが、注意点もあります。体調不良を理由に退職した場合、転職先探しに影響が出ることは必須だからです。
例えば、転職面接で「前の職場の退職理由」を聞かれたときに、答え方に困りますよね。多くの方は「適度にぼかした」回答になってしまいます。
なかには、新卒から1年も経たずに退職してしまい、どうみても「訳ありな経歴」の方もいるはず。後ろめたさがある回答は、面接官にも伝わってしまいます。
前の職場の退職理由はなんですか?
な、なんというか…職場の方針と…考えが合わなくて
ストレスで退職した後の転職活動は、かなりのパワーを必要とします。
転職に不安を感じる人は、リハ専門の転職エージェントに相談しても良いでしょう。彼らはリハ転職のプロなので、面接での受け答えや書類作成などを指導してくれます。
また、あえて厳しい言い方をすると、残念ながらあなたは「体調を崩すような職場を選んでしまった人」なんです。とうか、僕もそうでした。個人の判断で同じ過ちを繰り返さない為にも、第三者に相談するのは大事だと思います。
リハ専門の転職エージェントの選び方
体調不良になってしまったら、一旦休むべき
さて、まとめです。今回はちょっと重たい話題だったかもしれません。もしかしたら、STを目指す人や若手のSTさんの不安を煽る内容かもしれません。
でも、全国に少なからずいるであろう「あの頃の僕」のようなSTに向けて、参考になればと思いで記事にしてみました。
結論としては「体調崩してまでSTを続けないで!」と言いたいです。まずは一旦休みましょう。そして、よりよい職場を探して転職しましょう。
一回、心療内科行こうかな…
職場を変えるように動こうかな…!
もう限界かも…と感じている人が、ポジティブな方向に動くきっかけになると嬉しいです。
ちなみに僕は最初の職場(回復期)を退職してからは、しばらくボーッと過ごしました。そして数ヶ月経った頃に、ようやく本当の自分が取り戻されてきた感覚がありました。それまで頭が回っていなかったことを実感できたんです。
側からみたら「たかが1年働いた位で」と思われるかもしれませんが、当事者にとっては地獄のように長い時間でした。
STは国家資格です。選り好みしなければ需要もまだあります。長い目で見て、ST自体を続けられるようにするのが大事だと思います。無理して体調を崩すくらいなら、もっと自分に合う職場を探すべきです。
どうかまずは、ご自分をお大事に。
仕事を「辞めるべきタイミング」や「退職後のプラン」ついては下記の記事で詳しく解説しています。