言語聴覚士でブロガーのツバメです。
この記事では「理学療法士はもうオワコンなのか?」というテーマについて解説&考察していきます。
ちょっとネガティブな話題ではありますが「リハビリ職のミライ」を考える上で、避けては通れないテーマだと思います。
私見というよりは、国や協会が発表しているデータを参考に、一歩引いて考えるようにしました。
リハ業界の未来を考える為の、参考になると嬉しいです。
この記事の内容
- PTがオワコンと言われる理由
- オワコンPTにならない為の方法
理学療法士はずばりオコワンなのか?
最初に結論をひとことでまとめます。以下の通りです。
「給料が上がらない =オワコン」と捉えるなら「PTは確実にオワコン化する」
「給与」や「待遇」という切り口でPTの将来を考えると、もうこれは確実にオワコン化が進んでいます。国が発表しているデータ等からも言い切れます。
例えば2000年ごろのPTの平均年収は500万円程度、そこから僅か15年程度で、平均年収は420〜430万円程度まで下がっています。これだけでも説明十分です。
続いて、PTがオワコンと言われる理由について、解説します。
※この記事では、財務省・厚生労働省・日本理学療法士協会などのデータを参照しました
PTがオワコンと言われる理由5つ
PTがオワコンと言われてしまう理由は、主に以下のものがあります。
PTがオワコン言われる理由5つ
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オワコン化最大の理由は人員飽和
上記の表は、厚生労働省が発表したPT・OTの需要と共有の推計です。見たことがある方も多いと思います。
そして、この表が示していること、つまり供給過多こそが「PTはオワコン」と囁かれる最大の理由です。
なにしろ、「2040年にはバリバリの供給過多になるでしょう」と、国が言っているんですからね。そして、供給過多な商品・サービスは確実に値崩れする。
PTは医療分野であり、国としての必要性もあります。でも、すでに「PTを作り過ぎてしまった」感は否めないですね。
スーパーなんかでも、仕入れ過ぎた商品は安くなるもんなぁ。
参考:厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(平成31年)
正直、定年まで働けるかわからない
自分は定年まで働けるんだろうか?
上記のような悩みを抱えるPTさんは多いはず。臨床では体力的な問題もありますよね。「本当に定年まで臨床で働けるのだろうか?」という疑問を持つのは当然です。
一般的に、施設や病院に勤務する理学療法士の定年は60~65歳。なかには定年後の再雇用で、65~70歳まで働くことが可能な場合もあります。だけどそれは制度上の話。体力的な限界が来ないという保証はありません。
確かに友人PTも、30代ですでに椎間板ヘルニアの手術を受けています。
現在のベテランPTのキャリアは参考にならない
将来設計をする上では、先輩たちの実例も参考にしたいですよね。でもそもそも、今のベテランPTのキャリア形成は参考になりません。2022年時点で、50代以上のPTはわずか7%程度しかいないからです。
今ならまだ「養成校の講師」などのセカンドキャリアに就きやすいかもしれません。でも、10年後、20年後はどうでしょうか。30%くらいのPTが50代以上になります。その中から講師などに転身できる人は、かなりのエリートですよね。養成校の数は確実に減りますし、セミナーを受ける人も減ります。競争は激化する一方でしょう。
体力的に定年まで働けるかわからない上に、講師などのポジションは競争が激化する。多くのPTが将来に不安を感じ「オワコン」と嘆きたくなる気持ちもわかります。
※PTのセカンドキャリアについては別記事でも詳しく解説しています。
参考:日本理学療法士協会「統計情報」
参考:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 理学療法士・作業療法士分科会(第3回)」
給与水準は横ばいどころか低下
上記の表は、財務省が発表したPT・OTの給与水準です。医師や看護士、薬剤師といった医療関係職の給与水準が右肩上がりの中、リハ職の給与は20年以上も横ばい。むしろPTだけは給与水準が下がってます。
ちなみに上記の資料は「PTの給料が低くて大変だね」という議論に使われたのではありません。医療現場の診療報酬をマイナス方向に改定する為に提示されたデータです。
「一般企業の給与は上昇してないのに、医療従事者の給与水準はどんどん上昇しちゃってるよね」というのが財務省の見解。国もお金がないので、診療報酬はどんどん改悪されていきます。そんななか、PTの給与水準が上がる可能性は低いです。
参考:財務省「財政制度分科会 社会保障について②」(平成29年10月25日開催)
そもそも理学療法士の給料は全体の平均よりも安い
今後もPTの給与は上がらないであろう事と併せて再認識しておきたいのは、そもそもリハ職の年収は全体平均より低いということ。
国税庁の発表によると日本全体の平均年収は436万円。そしてリハ職の平均年収は411万円。20万円以上の差があります。
介護職なども含めた「医療・福祉分野全体の平均」よりは高いですが、金銭的な優位性は低い業界だと認識しておくべき。資格をとるのに数百万円も必要な割に戻ってくる金額は少ないです。
日本平均とリハビリ職の年収比較
日本全体の平均年収 | 436万円 |
理学療法士の平均年収 | 411万円 |
医療・福祉分野の平均年収 | 401万円 |
参考:国税庁「民間給与実態統計調査結果」令和元年分 参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和2年
理学療法士の政治力は低い
前述した「診療報酬の改悪」に大きく関わるニュースがあります。それは、理学療法士の小川克己氏が2022年の参議院議員に落選したことです。この落選により、国政の場から理学療法士の姿が消えました。これは2009年以来の状況。
参考:小川かつみ「参議院選挙ご報告とお詫び」
2023年1月にPT議員が再当選
2023年1月、理学療法士の田中昌史氏が参議院議員に繰り上げ当選。現職の辞職に伴うものでした。小川氏の落選以降「PT議員ゼロ」の状態が続いていたので、業界としては明るいニュースです。
しかし、まだまだ政治的な影響力があるとは言えない状況です。例えば、2023年の時点で看護師出身の現役国会議員は4名、薬剤師出身は3名います。PT出身の議員は少ないのが現状です。
参考:日本経済新聞「瀬戸隆一氏ら3氏が繰り上げ当選、衆参議員の辞職で」
参考:日本看護連盟「国会議員」
参考:日本薬剤師連盟「薬剤師国会議員紹介」
自腹の自己研鑽が割にあわない
理学療法士にとって、勉強会などの自己研鑽はつきもの。医療職になるからには「働き出してからの勉強は必要」だと思っていた、でも想像以上の勉強量に疲れている…という人も多いでしょう。
なにより問題なのは、大半の自己研鑽を自腹で行う必要があるということです。専門書は一冊5,000円以上しますし、実践的なセミナーの参加費は「1万円超え」なんてことも日常茶飯事です。
PTの給与水準は下がっているのに「勉強しろ(ただし自腹で)」というプレッシャーが消えることはありません……。
もちろん、自分自身が「よいPTになりたい」という気持ちも、自腹で自己研鑽をする理由になるでしょう。だけど正直、出せないものは出せないですよね。PTにも生活があります。趣味やちょっとした贅沢にだってお金を使うべきです。
自分の楽しみを我慢してまで、自己研鑽するのは割に合いません。
これからの時代、効率良く低コストで自己研鑽をしたい人はオンライン式のセミナーがおすすめです。
特に、リハノメ
オワコン理学療法士にならない為の対策
ここまで解説してきたとおり、正直なところ今後「理学療法士の待遇改善は難しい」というのが現実。
でも「PT=オワコン」と言い切ってしまうにはまだ早いです。確かに、今後成長しづづける分野ではありませんが、国家資格を保持しているというアドバンテージはまだまだあります。
それに「供給過多になる」という話も、あくまで「みんなが今までのように働くなら」というのが前提になります。例えばですけど、全く新しい分野でPTのニーズが高まったら、新たな需要が生まれることになりますからね。
ここからは「PTオワコン化の波」に飲まれない為の対策をいくつか取り上げます。優先度が高い順に並べてます。
オワコン化に飲まれない為の対策
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転職をする
転職は最も早めに検討すべきオワコン対策です。なぜなら、転職できる回数には限りがあるからです。
もちろん、今の職場に満足しているのなら、そのままでオッケー。だけど、もしも職場に不満ばかりが募るのなら、早めに転職を考えておきましょう。
「より良い職場へ、早いうちに」これは鉄則です。自分に合わない職場で働いてもいいことありません。臨床へのやりがいを見失う可能性もあります。
- 上司が尊敬できない
- PTの質が低い
- 不正請求など横行してる
そして、転職活動に不安がある人は、まずリハ専門の転職エージェントに相談だけでもしてみましょう。「転職先としてどんな選択肢があるのか?」を知れますし、客観的な「自分の市場価値」を知れるのもいい所です。
特に、応募書類の作成や面接対策に不安がある人にとって、エージェントは強い味方になります。例えば、仮に最初の面接で不採用になったとしても、理由をエージェントが聞き出してくれるので、次回以降の面接に生かすことができます。
そもそも、仕事が忙しいと転職活動が後回しになりがち。業務に追われ、気づいたら10年選手…なんてパターンだけは避けましょう。重い腰を上げる為の手段として、第三者の力も借りちゃいましょう。
リハビリ職専門のおすすめは下記の2社。その他のサイトも気になる人は、別記事も参考にして下さい。
- PTOT人材バンク
- リハ専門で最も歴史が長い
PTOTSTワーカー - リハ専門で求人数が多い
転職エージェントを利用するメリット
- 希望に沿った求人をピックアップしてくれる
- 非公開求人を紹介してもらえる
- 書類選考や面接の相談ができる
- 年収アップの実例多数あり
※さらに詳しい「リハ専門の転職エージェント」の選び方は下記の別記事で解説しています。
一般企業への転職もできる
ちなみに、転職する際にはリハビリ臨床以外の道も検討して良いと思います。それこそ「一度別の職業についてみたい」なんていう場合は早めに行動しておいたほうが良いです。
なかには、一般企業でもPTの資格が重宝される場合もあります。下記の記事で詳しく解説しているので参考にして下さい。
専門性を高める
自分に合った職場に入れているのであれば、まずはそこでの臨床を頑張るべきです。目の前にある仕事を十分にこなせないPTなんて、それこそ終わってます。
でも正直なところ、臨床を「極める」ことの優位性は下がっているとも感じます。どんなに専門性を高めても、貰える給料はほとんど変わりません。昇進のポストも限られています。
だけどそれでも、専門性を高めることは必須だと思います。なぜなら、この後に紹介する「副業」や「独立」という道を選ぶ際にも「PTとしての専門知識が活かせる」からです。
副業を始める
すでに副業をしている方は増えていますが、今後ますます増えていくでしょう。
PTの給料は上がらない。それならば、自分で稼ぐしかないというは当たり前の流れです。
そして、どうせ副業をするのなら「専門性を活かせるもの」が良いです。一般の方にはない特別な技能ですからね。差別化がしやすいです。
PTの資格を活かした副業は「PTパート勤務」などをはじめ「パーソナルトレーナー」などがよく知られてます。また、実は国の援助を受けてセミナー講師をすることなども可能です。詳しくは別記事を参考にして下さい。
逆に言うといつまでも「副業禁止」の職場はオワコンかも…
独立・開業する
最近は独立するPTも増えています。実際に僕の周りでも数人のPTが独立・開業しています。
でも大前提として、理学療法士が単独で「理学療法」を提供することはできません。「理学療法」とは、医師の指示の元で行うものです。
そのため、理学療法士の専門性を活かして独立する場合「整体院」や「ストレッチ専門店」「その他予防介護事業」を選ぶパターンが多いです。もちろん他にも選択肢はあります。こちらの記事で詳しく解説しています。
働き方をチェンジした理学療法士の実例
前述のようなオワコン化対策について、僕の周囲でもすでに動いているPTさんがいます。職場を変えたり、就労スタイルを変えたりした結果「働き方を変えてよかった」と思えている人たちです。
働き方の変更は「自分自身のオワコン化」=「モチベーション低下」を未然に防ぐためにも大事な要素。
なんとなく働いてるのと、やりがいを感じて働いてるのは大違いですからね。後者で入れるように、調整をしないといけません。
働き方を変えて前向きになれたPTの実例
PT | 働き方を変えてよかった理由 | 前の職場 | 今の職場 |
---|---|---|---|
Aさん | 仕事のやりがいが増えた | 訪問看護ステーション | 訪問看護ステーション |
Bさん | 時間に余裕が出来た 新しいチャレンジが出来る | 老健の常勤フルタイム | 老健と訪看(パート掛け持ち) |
Cさん | 視野が広がった 開業して将来への不安が減った | 病院勤務 | 色々経て独立開業 |
仕事に前向きになれたAさんの例
職場を変えたことで、自分自身のオワコン化を防げたという例を紹介します。
上記表のPT:Aさんは、訪問看護ステーションから、別の訪問看護ステーションへと転職しています。実は、職場を変えた大きな理由として「臨床のマンネリ化」があったとそうです。
転職前の訪看は介護保険での介入が多く、しかも「現状維持」を期待されるようなリハビリが大半。あまり状態変化のない中で、業務も繰り返しになりがちでした。必要性が低いという理由でリハ終了にしたくても、個人の意見は通らない。そんな中で、学びのモチベーションも下がっていってしまったんですね。
一念発起して、別の訪問看護ステーションに転職したAさん。転職先は医療保険での介入がメインで、利用者さんの入れわかりも多い職場。難病の方や、癌末期の方も多く臨機応変な対応が求められました。いつからか、自分は「需要の高い仕事をしている」とも思えるようになったそうです。
職場を変えたことでオワコン化への不安が減りました。今の仕事は経験にもなるし、将来にも繋がっている実感があります。
仮にPT業界がオワコン化していくとしましょう。そんな時、まず淘汰されるのはどんな職場でしょうか?
前のAさんの職場のように、マンネリ化した業務ばかり職場が危険なのは間違いないです。そういった職場から離れておくことも重要な対策です。
※職場・働き方を変えてよかったPTの実例は、下記の別記事でも詳しく解説しています。
まとめ:オワコン理学療法士にならない為に行動しよう
「PTはオワコンか?」と論調は、もう随分前から言われ続けています。そして正直なところ「待遇面」だけで考えるとオワコン化は進んでいると言えます。
だけど「専門的なスキルがある」だけで優位なんです。世の中には「自分には特殊な技能がない」と悩んでいる人もいます。過去の僕がそうでした。
PTの国家資格を保持している時点で、手持ちの切り札は一枚ある状態。それを生かせるかどうかは自分次第。
ただ雇われて指示通りに動くPTではなく、どんな状況でも社会から必要とされる人材を目指さないといけませんね。下記の3ステップがオーソドックスなプランと言えるでしょう。
これからのPTが生き抜くための準備
- 早めに自分に合った職場を見つける
- まずはPTとしての能力を高める
- 仕事に慣れてきたら、さらなる転職や副業・独立を検討
リハノミライではこの他にも、これからのリハ職の働き方について記事を書いています。参考になると嬉しいです。
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