訪問STのツバメです。
この記事では、訪問リハで働くために知っておきたいマナーについて解説します。
「自分の常識、他人の非常識」とはよく言ったもので、よかれと思った行動が原因で、クレームになることも少なくありません。
まず大前提として、家庭によってマナーの価値観は様々です
もちろん、一般的なマナーを知っていることも重要です。ただ、「他じゃどうかしらんけど、ウチではこうなんじゃい!」といったこだわりは「地雷」にもなりやすいポイント。
この記事では、訪問リハの現場で僕が経験した家庭ルールや、必ず抑えておきたい一般的なマナーを紹介します。参考になると嬉しいです。
「家庭ルール」は、なるべく早く把握する必要があります。
意外なことがクレームに! ご家庭の独自ルール例
まず先に、僕も実際に経験した「ご家庭の独自ルール」例を解説します。
独自ルール例
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〇〇と呼ばないで欲しい
お父さん…奥さんのリハビリについてなんですが…
あんたに「お父さん」と呼ばれる筋合いはないわい!
上記の様な「お父さん呼び」の他にも下記の様に色々とパターンがあります。
- お父さん、お母さんと呼ばないで
- 奥さんと呼ばないで
- 下の名前で呼ばないで
- 苗字で呼ばないで
- 「〜様」とかやめて
ご家庭で誰をどう呼ぶか? というのは、気を遣うべきポイントです。本人が直接「〇〇とは呼ばないで」と言ってくれるならいいんですが、内心で「この呼ばれ方、やだなぁ」と思っているパターンもあります。
ご本人に対しては「苗字+さん」と呼べばほぼ間違いないです。
でも、ご家族の呼び方はややこしくなるパターンもあります。例えば、奥さん(に相当する人)と、実は婚姻関係が無いなど、家庭環境が複雑な場合もあります。
他にも、「奥様ですか?」と問いかけた方が「娘さん」だったりしたら最悪です。年齢的に見分けが難しい場合もあります。誰をどう呼ぶべきかは慎重に見極めたいところです。事前情報があれば必ず目をとおしておきましょう。
迷ったときは「なんとお呼びしたらよいでしょう?」と聞いていいと思います。
インターホンを鳴らさないで
- 子供が寝てるから
- そのまま入ってきて
- 何回も鳴らさないで
まずはインターホンについてです。「入室前に鳴らす」が一般的な選択ですが、それを嫌がる方もいます。「子供が寝てるから」などはわかりやすい理由ですが、「うるさくて嫌いだから」なんて場合も。
あと、ご自宅の門と玄関の両方にインターホンがある場合「門では鳴らす」「玄関だけ」「両方」など、パターンが複数存在します。なかには「玄関だけ鳴らしてくれれば結構です」という家庭もあります。
初回訪問以降に、「次からインターホン鳴らさないで」と言われた場合は、それをきちんと覚えておいたり、他のスタッフと共有することが大切です。
鍵は閉めないで
入室したあと、玄関の内鍵を閉めるかどうか。どちらが正しいかは家庭によります。
「鍵は閉めた方がいいですか?」などと確認しましょう。そしてそれを覚えておきましょう。
ここで「鍵かけに関してのクレーム例」を紹介します
スタッフは鍵を使い入室。リハを終えて退室するとき、玄関に鍵をかけてから帰りました。すると、「玄関の鍵は閉めないでくれ」というクレームが入ったんです。
介護者さんからすると「鍵はエントランスのオートロックを開けるためのもの」であって、玄関の鍵は閉めないで欲しかったそうなんです。これは確認しておかないと分かりませんよね。
このような独自ルールは、共有が大切です。複数のスタッフが何度も同じミスをすると、利用者さんにもストレスがたまります。「ちょっと特殊なルールがあるな」と感じた場合は、まっさきにチームで共有することが大事です。
電気・エアコンは付けないでほしい
室内環境に関する価値観もひとそれぞれ。
例えば「もったいないから電気は付けないでくれ」という人もいます。
なので、ちょっと「部屋が暗いな」と感じても、いきなり「電気つけますねー!」なんて対応はしない方がいいでしょう。無闇な変更には注意が必要です。
環境のこだわりって結構あります
- 昼間は電気を付けない家庭
- 電気が眩しいから暗めがいい
- 電気代を少しでも節約したい
- トイレ(介助の際)は必ず「小」の方で流して欲しい
- エアコンは使いたくない
「僕らから見た適切な環境」が利用者さんや家族にとっても快適とは限りません。すり合わせが大事です。
ただし、室内温度など「利用者さんの体調に関わること」に関しては、積極的に指導するべきです。特に夏場の高温・多湿。老々介護のご家庭では、部屋が暑いこと時代に気づかなかったりもします。
室温管理などの指導に役立つプリントなどは別記事にまとめています
訪問するにあたっての、基本的なマナーは抑えておくべき
訪問リハでは、ご家庭独自のルール確認が大事。ですが、もちろん基本的なマナーも大事です。
気をつけるべきポイントを、訪問前〜訪問後まで、時系列順に解説します。
※クリックでジャンプ
現場到着〜入室までのマナー
トイレは事前に済ませる。コンビニや公衆トイレの場所は頭にいれておこう
やばい! もれる! そんな緊急時を除いて、利用者さん宅のトイレを仮のはご法度です。
トイレは移動中や、事務所で済ませましょう。訪問リハでは1日のほとんどが出ずっぱりということも珍しく無いです。
コンビニに立ち寄った際にトイレを借りたり、公衆トイレがある場所などは確認が大事です。
これはマナーでもあり、自分がピンチに陥らない為の工夫でもあります。
到着は早くもなく、遅くもなくが基本
遅刻は良く無いですが、早すぎる到着も良くないです。予定時刻の2〜3分前が個人的にはベスト。
早めに現場に着いたとしても、5分以上前に訪問するのは避けた方がいいです。
あまり到着が早いと、利用者さんを焦らせてしまう場合があります。
今、リハ直前のトイレに行こうとしてて…!
入室前に服装・匂いなどにも気をつける
入室前には、身だしなみに気をつけましょう。
服装はもちろんですが、意外と「匂い」を軽視してる人もいます。
「昼食のニンニク」が凄かったりとかですね。
もちろん、こっそり「タバコ」を吸ってから訪問…なんてのはご法度ですよ。
上着の付着物に注意
「上着は脱いでから入室するのが理想」という人もいます。
確かに理想ですが、実際に冬は寒いですし、色々荷物もありますし…。ね。
ただ、上着を脱ぐ・脱がないは別としても、入室する際は「汚れや付着物」に気をつけましょう。
入室前に気をつけるべき付着物
- 汚れ・ほこり
- 雨などで濡れている
- ペットの毛
- 花粉
小さなコロコロ(クリーナー)を持っていると安心です。
ドアの開け閉めはゆっくりと
室内・玄関問わず、ドアはゆっくりと閉めましょう。
手を離すと、勢いよく「バタン」と閉まってしまうドアは結構あります。
玄関先の大きな声は注意が必要
初回訪問時、いきなり玄関で「リハビリに来ました〜!」など、大声で呼びかけるのは避けた方がいいです。
- ご近所にリハビリしてることをバレたくない
- 近所に神経質な人が住んでいる
- そもそも近所迷惑
インターホンに返答がないなど、仕方なく大声で呼びかける必要もあるでしょうが、さまざまな理由で「大声が嫌がられる」ケースがあることも頭に入れておきましょう。
靴は揃えて、下座に置くのがベター
利用者さん宅に入る際には、脱いだ靴をきちんと揃えましょう。
その際に、家の方に対してお尻や背中を向けない方がいいです。
そして、実は玄関にも「上座・下座」の概念があります。
※玄関の形状や、飾りだなの無い下駄箱など、例外もありややこしいです。下記のサイトなども参考にしてください。
入室後〜初回訪問で気をつけたいポイント
手洗い場が借りづらい場合、見えるように手指消毒をする
コロナ禍ご時世、感染対策として「入室後はまず手を洗うor手指消毒する」ことになります。
洗面所など、手を洗う場所がお借りできると一番いいですが、借りづらい場合もあります。
ごめんなさい、洗面所が散らかってて…!
手持ちのアルコールなどで手指消毒を行う際は、相手に見える位置で行うのがベターです。
お互いのために「きちんと感染対策している」ことを、アピールしましょう。
居間などの上座・下座の概念も頭に入れておく
特に初回訪問では、居間・床の間などに通される場合もあります。
その際は、下座に座るようにしましょう。
下記サイトなどが参考になります
名刺の受け渡しは多いので、在庫を切らさないように
名刺は在庫を切らさない様に注意しましょう。
担当者会議などに参加すると、大量に消費することも多いです。
もちろん受け渡しのマナーも頭に入れておきましょう
声の大きさに注意する
リハの際の声の大きさって、ついつい大きくなりがち。だけど、心地よいボリュームはひとそれぞれ。
なかには近所迷惑などを気にするご家庭もあります。
実際、「近所に会話が漏れてるので、声のボリュームを落としてほしい」というクレームが来たことがあります。
介入中はなにごとも「事前の確認」を!
記事の前半で述べたように、ご家庭独自のルール・価値観は様々。
どこに地雷(クレーム)ポイントが潜んでいるか分からないです。介入開始から間もないうちは、何をするにしても事前の確認をしましょう。
事前にひとこと確認するべき行動例
- 会社からの電話に出てもいいですか
- キッチンに入っても良いですか
- ベッド上げ(下げ)ますね
- ベッドに乗らせていただきます
- 洗面所お借りします
- スリッパお借りします
リハ終了〜退出後にも気をつけたいポイント
リハ終了〜退出時にも気をつけたいポイントはあります。
次回の訪問予定など確認しておく
次回スケジュールの確認は大事です。特に、介入間もない場合、利用者さんも把握できていない場合が多いです。
口頭で伝えるだけでなく、カレンダーに書き込む・予定表を作って渡すなどの対応をしましょう。
気になることなどないか、家族に確認する
良く分からないがあったんだけど、聞きづらかった…
介入の最後には、利用者さん・ご家族に対して「気になること・わかりにくいこと」などがないか確認することも大事です。
自分から質問を切り出すのが苦手な方もいますので、こちらからリードしましょう。
訪問先を出た後も、会話や言葉遣いには気をつける。
訪問先の玄関を出た後も注意は必要です。
室内以外の場所でも、いつどこで誰に見られているかわかりません。
特に気をつけたいのが、同僚と同行訪問した後の帰り道。
いや〜結構重症例だったね〜!
ほんと、大変そうな症例ですね〜!
上記のような「訪問の感想」的な会話は、思わず口にしてしまいそうになるかもしれません。でも、もしかしたら家の仲間で聞こえたり、近所の人に聞かれたりする可能性もあります。
利用者さん宅の近辺だけでなく、訪問エリアでの行動には、常日頃から気を遣いましょう!
訪問中に出されたお菓子・飲み物は頂くべきなのか?
先生、どうぞお茶を飲んで行って下さい!
家庭によっては、訪問中にご家族から「お菓子や飲み物」などを勧められることがあります。
このようなおもてなしは、スマートに断れるならそれが一番。ですが…なかなか人間関係は難しいです。
かなり推しが強かったり、もてなしを断られたのをショックに感じるご家庭もあります。思ったよりも「もてなしをありがたく断る」のは難しい技術です。
しかし、「持って帰ってパターン」もあります。
じゃあこのお菓子だけ持って帰ってよ!
一度はお断りして、どうしてもと勧められたら「次回からはお気遣いなくお願いします」などと伝えるべきでしょう。
おもてなしのお断りパターン
- 感染対策の一環でいただけません
- 毎回伺うので、次回からは気を使わないでください
- すみません…、会社で禁止されています
とにかく信頼関係の構築が重要
ここまで、アレコレとマナーやお作法について語りましたが、絶対的な正解はないです。
初回介入のときと、何年も通っているお宅では、受け答えの方法も変わります。
マナーというのも、結局は信頼関係を構築するための手段なんですよね。利用者さんに信頼して貰えれば、クレームなどに発展する可能性はグッと減ります。
マナーを尊重しつつ、信頼してもらえる距離感を探して行くことが大事です。
信頼関係(ラポール)の形成については別記事でも解説しています!
結局は臨機応変なマナー対応が求められるのが訪問リハ
今回は、訪問リハでのマナーについて、僕の経験を元に解説しました。
アレコレと気をつけるポイントを並べてみましたが、結局は「ケースバイケース」としか言えないのが正直なところです。
しかし、基本的なマナーやクレーム例を知っておいて損はないと思います。
僕は訪問STですが、訪問リハの仕事が好きで、楽しくやっています。
訪問で働くセラピストが増えてほしいので、この記事がどなたかの参考になると嬉しいです。
訪問リハの実情などは別の記事で解説しています!