訪問STのツバメです。
今回は現役のSTさんへのインタビュー記事。「色んなSTさんの経歴を見ていこう」という企画です。
STは職場の人数が少ないこともありますし、他のSTさんがどんなキャリアを積んでいるのって…気になりますよね!
そこで、今回は「はるみちさん」という方にインタビューをさせて頂きました。STでありながら、一般企業出身だったり、転職や副業も経験していたりと、お話しの聞き甲斐がありそうな方なんです。
色々と、ぶっちゃけたお話しを聞いちゃいました。STのみなさんの参考になると嬉しいです。
今回インタビューしたSTさん
- 妻子ありの40代男性
- ST歴8年位
- 副業や投資もしている
- 公認心理師の資格も取得
はるみちさんの経歴
- 4年制の大学を卒業
- 製薬会社の営業として勤務
- 2年制の養成校に入学・卒業
- 病院勤務:100床以上の回復期、外来を担当。約3年勤務
- 訪問看護ステーション勤務①:約1年勤務
- 訪問看護ステーション勤務②
はるみちさんの経歴は、上記のような感じ。もともと一般企業勤めだったということで、色んな経験を経てSTになられた方です。紆余曲折はあるものの「STになってよかった」し「今の職場に転職してよかった」とのこと。
「過去の経験」や「今後のSTとしての展望」など聞いてみちゃいましょう。
はるみちさん、今回は「現役STインタビュー」にご協力頂きまして、ありがとうございます。
こんにちは、よろしくお願いします。
※項目ごとにやりとりを纏めてるので、気になる見出しにジャンプしてくださいね。
現在の仕事内容(訪看)について
まず、現在の仕事について聞かせて下さい。訪問看護ステーションでの勤務とのことですが、どのような対象者を担当していますか?
割合で言うと、対象者の約7割位が小児で、脳性麻痺や発達障害の方ですね。残りの3割位が成人で、70代の高齢者が多いです。
小児に関しては、例えば脳性麻痺で重度の方だと、呼吸関連のリハが多いですね。発達障害という側面だと学習指導、生活指導、言語・発声・構音の指導とかです。
訪問で小児が多いとは意外でした。
過去に小児分野の経験はあったんですか?
小児の経験はゼロでしたね。今の訪看で働くようになってから受け持つようになって、学び始めた感じです。最初はほんと手探りでした。
成人メインだった時もそうでしたけど、実際に関わることになった方に関することを、その都度勉強しながら関わっている感じです。
なんと、小児経験ゼロだったんですね。
小児の勉強に関しては、どんな風にされましたか?
小児の勉強は…研修は色々いきましたね。
社内でも講義形式の研修があったり、外部の研修にも行かせて貰いました。
あとは、先輩STに同行して、現場の雰囲気を少しずつ勉強した感じですね。
訪問リハビリの仕事について
僕も、同じ分野で働く身なんですが、訪問リハビリの良い点ってどんなとこだと思いますか?
訪問リハビリでは、患者さんの病院では見られない側面を見られることですかね。日常生活や家庭環境をより深く知って関われると思います。
特にどんなときに、それを実感しますか?
例えば、家に置いてあるモノとかからも相手のことを知れるんですよね。写真や絵が飾ってあったり、トロフィーがあったりとか。そういう情報から得られる情報はとても多いですね。
呼称訓練やるにしても、教材が「ご家庭の写真」になるだけで、その人の人生との距離感がグッと近くなります。同じ「桜」という言葉でも「ああ、この桜ね」という共通認識が持てるというか。
在宅ならではの関わり方をされてるんですね!
では逆に、訪問リハビリの大変な点は何ですか?
うーん、大変なのはリスク管理ですかね。いろんなリスクがありますけど。まず、身体的リスクが高い方と関わる場合は、全身状態に関連する予備地知識も入れておく必要がありますからね。
あとは「自由な部分」もある反面で「任せっきりにされてる」部分もあると感じます。自分で判断することが多いから、周りにうまく相談できないと、追い込まれちゃうかもしれませんね。
転職して訪問(訪看)リハビリに移って良かったと思いますか?
はい、良かったと思います(即答)
おお、即答ですね。大変な面もあるってお話だったので、どうかと思いましたが。
訪問はよくも悪くも、自由な部分が大きくて、自分にとってはそれがプラスでしたね。
前は病院勤務だったんですけど、やっぱり病院って独特な組織ですよね。大袈裟に言っちゃうと独立国家みたいなところがあると思います。
よくわからないルールや常識や、力関係が働いていて…正直自分にはそれが下らないものに見えてました。
私はもともと一般企業で働いていたから、特にそう感じるのかもしれません。
訪看から訪看に転職した理由
はるみちさんは、病院から訪看に転職して、最初の訪看は結構すぐに退職してますが、ひとくちに「訪問看護ステーション」といっても合う合わないがあったんでしょうか?
ひとことで言うと「管理者と合わなかった」という感じですね。
トップと考えが合わなすぎて、早々に退職を決意しました。
訪看って、良くも悪くも管理者の影響力が強いんですよ。雰囲気からルールから、ダイレクトに反映されるというか。
あー、なるほど。それは確かにそうですね。
例えば同じ訪看でも、事業所ごとにルールの違いとかも出ますからね。
STの場合、人員的な問題で複数の事業所を掛け持ちすることは多いと思うので「各事業所に合わせられるか」みたいなのも大事なポイントに思ますね。
なんというか、アメリカみたいに、州が変わればルールが違うみたいな感じというか(笑)
「州が変わればルールが違う」みたいな感覚、めっちゃわかります。
僕も訪看では、北、中央、南…みたいな感じで複数の事業所を兼任してるんですが、やっぱり管理者によってかなり雰囲気というかノリというか、違いを感じますね。
そもそもなんでSTになった?
はるみちさんは、もともとは一般企業で働かれていたようですが、そこからなぜ言語聴覚士になったんですか?
製薬会社の営業だったので、病院とかに出入りはしていて、リハビリ職の存在は知ってはいました。
で、やはり一般企業って、どうしても「売り上げ至上主義」みたいなところがあるんですよ。そんな仕事を続けていくなかで、リハビリ職に対する憧れみたいなものを感じていました。
なるほど、前のお仕事でリハビリ職との接点があったと。とはいえ、なぜその中からSTを?
STを選んだのは、僕にとって「食べる」「しゃべる」ことって、人の根源にあるものに思えたんですよね。ありがちな回答かもしれませんけど。
あと手先が不器用で、折り紙とかも下手くそなんで、OTは無いなと思いました(笑)
なるほど、すごく共感できます。
僕も「食べる」「しゃべる」が特に重要だという感覚はあります。
…ちなみに、STとして興味のある領域ってありますか?
うーん、興味のある領域…結構変化しますね。結局は、今仕事で向き合ってる方々に関する領域ですね。
なるほど、確かに目の前に人に関することが優先されますよね。
以前は神経変性疾の患者さんを見てたので、そういう分野に興味があったし、今は小児が多いのでそっちの興味が強いです。
もともと「絶対これ」というのはそんなに強くなくて、置かれた環境に興味を持っていく感じです。ある意味、こだわりとかは低いかもしれません。
STとしてのターニングポイントは?
今までSTとして働いてきたなかで、ターニングポイントはありましたか?
やっぱり訪問リハビリの分野に移ったことのインパンクトが大きいですかね。
病院では「STとして」だけ関わっていればよかったけど、訪問ではそうはいかなかった。
体全体のことを観察しないといけなかったり、それこそ家族関係や、家の構造とかまで考えたり。訪問で働くようになったことで、視野が広げられた感じですね。
僕も訪問STなんで、視野が広がるという感覚はすごくわかります。
視野を広げて問題に向き合うことで、逆に「これは…STの仕事なんだろうか?」とか思ったりもしますけどね。むしろ専門性は下がってるかも?(笑)
でも例えば利用者さんの家に、自分しか気付いていない「腐ってる床」とかがあるとして、それを見過ごすのも違いますよね。やっぱり、現状をチェックして、対応を考えないといけない。
なので広い視点で生活全体を見て、必要あれば他職種に相談したり…とかというような動きは必要に思ってます。
ちなみに、他の方に訪問STっておすすめできますか?
訪問STの仕事はおすすめできますね。「経験が浅いから…」とかの理由で踏みとどまる人もいると思いますけど、リスク管理とかしっかり対応してる事業所なら、不安も少ないはずです。
そのあたり、面接とかで質問していいと思いまね。「緊急対応ってどうされてますか?」とか、事前にガンガン聞いといた方がいいと思います。
最初の病院を辞めた理由は?
少しずつ、突っ込んだ質問もさせてください。
はるみちさんはSTとしても転職を経験してますが、最初の病院を辞めた理由ってどんなものでしたか?
うーん。正直言うと、もともと入職する前から「何年かで辞めるだろうな」という感覚はあったんですよ。転職ありきというか。
でも、思ってたより早く退職しちゃいましたね。なんというか、病院独自の封建制みたいな雰囲気に、合わなかったんだと思います。
そうですね…
病院の封建的な雰囲気というか、独自のルール感ってすごく心当たりがあります。このブログでも、そんなテーマの別記事を書いたくらいです。
あとストレス度もたぶん高かったんですよ。単純に、体調が良く無い状態が続いていました。サービス残業も多かったんですよね。
「このままだと体壊すかも」みたいな感覚もあって、辞めるべくして辞めた感じですかね。
仕事のストレスからの体調不良…僕も経験あるのでわかります。
リハする側がストレスで疲弊してたら、誰も得しないように思います。
そうですよね。結果的に、今の方が体調は良いですね。やっぱり環境があってなかったと思います。
やっぱり、人様のリハビリをする以上、まず自分が健康でありたいなと思います(笑)
未払い残業代の請求について
退職について、質問を続けますね。
以前僕が、はるみちさんからお話しを聞いて「すごいな」と思ったことに、退職時に残業代をきっちり請求したというのがあるのですが、それについてお話しを伺えますか。
確かに、退職時にいわゆる「未払いの残業代」は請求しましたね。前にいた病院は、不当なサービス残業が当たり前で…
なので、過去に働いた分はきちっと請求しました。最終的に未払い分として数十万単位の残業代を受け取りましたよ。
結構な金額になるんですね…
具体的に、どのような手順で請求したんでしょうか?
方法としては、弁護士さん経由で病院側と話し合って…という流れです。まずは、無料で相談できる法律事務所に行った感じですね。
弁護士費用の詳細な金額は忘れちゃいましたけど、実際に受け取れた残業代のなかから、何%かを支払うって感じだったかな? 固定報酬としての額もある程度決まっていた気もします。
なるほど。支払われた額の中から弁護士費用を払う、成果報酬みたいな感じなんですね。
弁護士費用は、取り返した残業代から考えると微々たる額でしたよ。正当な権利ではあるので、個人的には請求してよかったと思います。
他にも「有給消化させてもらえない」とか、不当な対応をよく聞きますよね。消化できないなら、買い取ってもらうとか、それなりの対応は主張していいと思います。
あと、これは私たちの仕事の悩み全部に繋がるんですけど「福祉の精神」って、取り扱いが難しいなぁと思うんですよ。
社会貢献したいと思った結果、自分を安売りしてるような状況になってる人もいる。言い方を変えると、自分の「労働的な価値」を自ら下げている人も多いように思えます。
あ〜、わかります。僕も前の職場とかで「この仕事は社会貢献」みたいな雰囲気を感じることがありました。「患者さんの為に毎日勉強しないの?」「残業して準備しないの?」みたいな感じです。
医療職である以上、自己研鑽は必要だと思いますけど…いきすぎるとちょっとしんどいなと思っちゃうことはありました。
そうですね。例えば、昔の上司で「リハビリという仕事は半分ボランティアだと思ってる」と言っている人もいたんですよね。でも私は、それじゃ元も子もないと思うんですよ。
そういう、いきすぎた奉仕を美徳としない為にも、業務とプライベートはきっちり分けたいですね。
なので、今まで働いてきた時間は取り返したかった感じです。個人的には、未払い残業代の請求とかはキッチリやっていいと思います。
そうですね。
法律事務所も相談は無料のとこも多いですし、近所の事務所なり、ネット経由なりで、相談して良い話に思えますよね。
退職時の請求ができる弁護士サービス例
公式サイト | おすすめ度 | 料金 | 弁護士監修 | 残業代の請求 | 有休取得交渉 | 後払い |
---|---|---|---|---|---|---|
請求オプションが 豊富 | ・相談:無料 ・退職着手: 55,000円 ・オプション: 回収額の20%(残業代・退職金の請求など) | 弁護士監修あり | オプションで可能 (回収額の20%が料金) | 可能 | なし | |
有休交渉など可能 | ・退職代行: 27,000円 会社との交渉: 2,000円(労働組合利用) | 弁護士監修あり | なし | 可能 | あり |
公認心理師の資格を取得した理由
はるみちさんは、数年前までSTなどの資格保持者が受験が可能だったルート(Gルート)を使って、公認心理士の資格も取得されていますよね。資格を取得しようと思ったきっかけは何ですか?
公認心理師の資格をとろうと思ったきっかけは、その知識がSTの業務内容にも生きる部分があると思ったからですね。
ただ、実際にそれが今の仕事に直接的なプラスになってるとは思わないですね。単純に肩書きが増えることは嬉しいですけど、別に名刺に書いてアピールするってこともないですし、会社にも言ってないです。
あ、会社に公認心理師を取得したこと言ってないんですね!意外でした。
なんとなく、自己研鑽の証というか、アピール材料として資格を取ることも多いように思っていたので。
あくまで、自分のバックボーンを少し厚くしたかったようなイメージですね。STとして利用者さんやご家族に接する場面でも、メンタル面を気にすることは多いですから。
資格をとったことで、以前よりは少し俯瞰してメンタル面を考えられるようになっているかもしれません。それくらいの変化です。
それでも、資格を取得してよかったですね。
副業でいくら位稼げてますか
「ココナラ
副業は一応、内容としてはカウンセリングになるんでしょうか。シンプルに「悩み相談」をサイト経由で受けてる感じです。結構「ココナラ」ではそういうったニーズがあるんですよね。
なるほど、STとはまた全然別分野のでの副業なんですね。
僕はココナラ副業のSTさんだと、ST学生向けの家庭教師とかされてる人など見かけたことあります。相談の対象者を「ST関連」とかに限定はしなかったんですね。言語とか、嚥下とか。
そうですね。もともと人から相談を受けるタイプではあったので、試しに手広く「悩み相談」って感じでやってみたら結構依頼があったって感じです。
一応、プロフィールに「言語聴覚士」とか、それこそさっき話題に出た「公認心理師」の資格を持ってますという記載はしているので、そういったポイントを信頼して相談してくれる人もいるのかもしれませんね。
ちなみに悩み相談の内容って、どんな感じですか?
いや、もうほんと様々ですよ。人生相談です。特に専門的な相談を受けるっていう訳ではないです。
心理学的な話とか、そういう知識を例に出すことはありますけど。
なるほど。ちなみにその副業で、どれくらい稼げるもんなんでしょうか?
ムラはあるんですけど…最初の4ヶ月で20万円くらいでしたね。
私の場合、一ヶ月目からリピートしてくれる方が出来たりして、なんだかトントン拍子に依頼が増えた気もします。
ええ! 副業とすると結構な額ですね。月5万位は稼げるイメージでしょうか。本業も家庭もあるのに、いつ対応してるんですか?
仕事から帰ってきて、子供を寝かしつけた後とかにコツコツと対応してる感じです。こちら側もメンタル的に疲弊するので、相談を受ける量は調整してますけど。
これだけで生活しようとは思いませんが、本業以外にも収入源があるのは安心感がありますね。
ちなみに、STとしての相談とかも受けてもらえる感じですか?
職場での悩みとか、転職のこととか…
全然大丈夫ですよ!
STさんからの相談もお待ちしてます!
はるみちさんのココナラはこちら
はるみちSTの今後の人生プランは?
それでは、最後の質問です。
はるみちさんの「今後の人生プラン」は、ずばりどんな感じでしょうか?
そうですね。今後、できれば「収入の柱が何本かある人」になりたいですね。まだまだ模索中です。
やっぱりSTが仕事の大きな一本の柱ではありますけど、一応副業もしてますからね。
なるほど。STの仕事だけにはこ、だわらない感じですね。
そうですね、STは続けるとは思うけど「絶対ST一本で」というような感じでもないです。
STとしての出世も諦めてる感じかもしれません(笑)
なるほど! 「STとしての出世」を意識するかどうかは、大きなポイントに思えますね。
はるみちさんはすでに副業でも投資でも結果を出しているので、他の方法でも結果が出せそうな気がしますね。
そうですね〜。今のところ「STの常勤」が収入の大半を占めてますけど、もろもろ上手くいけば、STは非常勤とかでもいいと思っています。
でも元々一般企業で働いてた身からすると、この仕事にやりがいを感じることは多いし、ST自体はずっと続けるでしょうね。
これからまた、いろいろなチャレンジをされそうですね。
またお話しお伺いしたいです。今後とも、よろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いします。