理学療法士の給料は、他の医療職と比べて低いと言われることが多いです。その実際はどんな感じなのでしょうか。
結論から言うと「初任給は他の職種と比較しても高め」ですが「経験年数が増えても給料が大きく上がらない」というのが実情です。これにより、多くの理学療法士が給料面での満足を得られにくいと言われています。
年代別の理学療法士の給料相場などについて、詳しく解説します。
理学療法士の給料は安いという実態について解説
それでは実際に、理学療法士の給料が安いと言われる理由についてみていきましょう。
主な注目ポイントは以下の4つです
- 年代別:理学療法士の平均給与
- 30〜40代では給与アップにほとんど期待できない
- 理学療法士の給料は医療職のなかでは安め
- 日本の平均年収と比較しても高くはない
年代別:理学療法士の平均給与
ずは、理学療法士の給与相場についてみてみましょう。下記の表を見てください。
年代別:理学療法士の平均給料
年齢 | 月給 | 年間賞与 | 年収 |
---|---|---|---|
20~24歳 | 25.1万円 | 36.8万円 | 338.5万円 |
25~29歳 | 26.7万円 | 65.3万円 | 385.7万円 |
30~34歳 | 28.7万円 | 77.1万円 | 421.5万円 |
35~39歳 | 32万円 | 85.1万円 | 468.8万円 |
40~44歳 | 33.7万円 | 84.9万円 | 488.8万円 |
45~49歳 | 34.3万円 | 80.5万円 | 491.5万円 |
50~54歳 | 33.4万円 | 78.5万円 | 479.2万円 |
55~59歳 | 42.6万円 | 111.8万円 | 623.3万円 |
60~64歳 | 34.6万円 | 122.9万円 | 538.3万円 |
65~69歳 | 39万円 | 10.2万円 | 478.3万円 |
理学療法士の20代での年収は300万円以上なのが程度が一般的。これは日本では高めの水準です。
ちなみに、一般的な新卒者の年収は240〜270万円程度とされています。
若手PTの給料が高めなのは、国家資格の「資格手当」が支給されるのが大きな理由ですね。
30〜40代では給与アップにほとんど期待できない
理学療法士の給料は高め。しかし、上記の表を見ても30代以降は年収の伸びがほぼ期待できないのが見てとれると思います。
40代から50代にかけては昇給が少なく、良くても年収500万円前後にとどまることが多い傾向があります。若い世代では一時的に高い収入を得られるものの、経験を積んでも劇的な給与増加が見られないと言えますね。
50代の後半で一時的に年収600万円が見えますが、これ以降はまた減少します。
30代〜50代でほとんど年収が伸びないのは不安かも…
※上記の表は厚生労働省の発表の下記推計データをまとめたものです(小数点以下は四捨五入しています)
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
理学療法士の給料は医療職のなかでは安め
例えば、医師や看護師、薬剤師といった他の医療関連職種と比較すると、理学療法士の年収は明らかに低い傾向があります。
給料が高い病院で働ければ別ですが、そうした職場は決して多くなく、競争も非常に激しいのが現実。有能な人材でも報われないという状況は、理学療法士のモチベーションを大きく損ねる要因にもなっています。
医師の平均年収 | 1,514万円 |
看護師の平均年収 | 508万円 |
薬剤師の平均年収 | 583万円 |
理学療法士(PT)の平均年収 | 411万円 |
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査:令和2年」
日本の平均給料と比較しても高くはない
日本の理学療法士の平均給料は一般職種の平均に比べて低めです。
日本平均とPTの年収比較
日本全体の平均年収 | 436万円 |
理学療法士(PT)の平均年収 | 411万円 |
医療・福祉分野の平均年収 | 401万円 |
参考:国税庁「民間給与実態統計調査結果」令和元年分 参考:厚生労働省「賃金構造基本統計
物価上昇についていけていない
2024年度の診療報酬改定では、理学療法士など医療・介護に関する職種の給料改善がされることになりました。
医療従事者の報酬がアップ。いわゆる「賃上げ」
ただ実際のところ、報酬アップの具体的な時期や内容は「職場次第」ということになります。実際に「物価は上がったのに給料は上がっていない」という方も多いでしょう。PTの給料は、上がるにしても時間がかかります。
なぜ理学療法士の給料は安いのかについて解説
理学療法士の給料が他の医療職と比較して安い理由には、いくつかの要素が絡んでいます。
この章ではその理由を一つずつ解説していきます。
理学療法士の診療報酬は国の一存で決まる
最も大きな理由の一つが、理学療法士の診療報酬が国によって決定されることです。診療報酬とは、医療機関が理学療法サービスを提供した際に受け取る収益のことです。
基本的にこの収益は国が決定するので、理学療法士個人が給料を上げるために自由に設定することはできません。すると、結果的に理学療法士の年収も限定されてしまいます。
1日に対応できる患者に限りがある
次に、理学療法士は「1日に対応できる患者の数」に物理的な制約があります。
理学療法は一人ひとりの患者に対して直接手をかける場合が多いため、1日に多くの患者を診ることが難しいです。また個々の患者に対するケアも非常に重要。
そのため、1日で多くの患者を診る医療職とは異なり、収益を増加させることが難しいです。これも理学療法士の給料が安い一因とも言えます。
キツキツのスケジュールで、1日のマックスは20単位ですね
理学療法士の人数はすでに飽和状態
上記の表は、厚生労働省が発表したPT・OTの需要と共有の推計です。見たことがある方も多いと思います。
この表で考えると、すでに2025年ごろからPTは供給過多になっています。さらには、2040年頃には約1.5倍というバリバリの供給過多になる予測です。供給過多な商品・サービスは確実に値崩れします。これも、PTの給料が安い理由です。実際、PTのレア度が高かった数十年前は給料は高めでした。
スーパーなんかでも、仕入れ過ぎた商品は安くなるもんなぁ。
参考:厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(平成31年)
理学療法士には開業権がない
理学療法士の給料が安い重要な要素として、開業権がないことも挙げられます。
例えば柔道整復師や鍼灸師などは開業して、より高い収入を得ることができますが、理学療法士はそうした選択肢がありません。開業が許されていないため、病院やクリニックに就職してその中で働くしかなく、給与もその枠内に収まることになります。このように、収入を大きく増やすための道が限られているのが現状です。
ちなみに同じリハ職でも、言語聴覚士は独立開業できます。医師の指示が必要ない分野に限られますが。例えば小児の構音障害とかでの独立が可能です。
理学療法士が給料を上げる方法
ここまで、理学療法士の給料が安いという現状について解説しました。
PTは決して待遇が良いとは言えませんが、それでも前向きに考えていくことも大事。
ここからは、理学療法士が給料を上げるための方法について解説します。
理学療法士が給料を上げる方法
- 転職をする
- 管理職まで出世する
- 副業を始める
- 独立・開業する
- 【絶対ダメ】マルチ商法に手を出す
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転職をする
転職は最も確実に給料アップが望める方法です。多くのPTが転職に伴う条件交渉で収入をアップさせています。
特に収入アップに繋がりやすいのは「訪問看護ステーション」への転職です。
ここで心に留めておいて欲しいのは、転職できる回数には実質的な限りがあるということ。あまり転職を繰り返しても信用を落としてしまいますし、40代以上の転職は動きづらさが増します。「より良い職場へ、早いうちに」これはPTとして働く上での鉄則です。
例えば転職活動が初めてで不安がある人は、リハ専門の転職エージェントに相談だけでもしてみましょう。「転職先としてどんな選択肢があるのか?」を知れますし、客観的な「自分の市場価値」を知れるのもいい所です。
リハビリ職専門のおすすめは下記の2社。その他のサイトも気になる人は、別記事も参考にして下さい。
- PTOT人材バンク
- リハ専門で最も歴史が長い
PTOTSTワーカー - リハ専門で求人数が多い
転職エージェントを利用するメリット
- 希望に沿った求人をピックアップしてくれる
- 非公開求人を紹介してもらえる
- 書類選考や面接の相談ができる
- 年収アップの実例多数あり
※さらに詳しい「リハ専門の転職エージェント」の選び方は下記の別記事で解説しています。
一般企業への転職もできる
ちなみに、転職する際にはリハビリ臨床以外の道も検討して良いと思います。それこそ「一度別の職業についてみたい」なんていう場合は早めに行動しておいたほうが良いです。
なかには、一般企業でもPTの資格が重宝される場合もあります。
下記の記事で詳しく解説しているので参考にして下さい。
管理職まで出世する
もしも、すでに自分に合った職場に入れているという人は、その職場で管理職を目指すべきです。
今の職場で管理職のポストにも期待ができるのであれば、勤続して課長や部長をめざすのが最も手堅いです。
ただ、PTは管理職のポストが空かない職場が多いのが現状。病院から転職して訪問看護ステーションのリハ管理者になるとかが、ひとつの定番になる理由がここにあります。
副業を始める
PTの給料は上がらない。それならば、自分で稼ぐしかないというは当たり前の流れです。そして、どうせ副業をするのなら「専門性を活かせるもの」が良いです。
PTの資格を活かした副業は「PTパート勤務」などをはじめ「整体院」などがよく知られてます。また、実は国の援助を受けてセミナー講師をすることなども可能なんです。詳しくは別記事を参考にして下さい。
独立・開業する
最近は独立するPTも増えています。実際に僕の周りでも数人のPTが独立・開業しています。
でも大前提として、理学療法士が単独で「理学療法」を提供することはできません。「理学療法」とは、医師の指示の元で行うものです。
そのため、理学療法士の専門性を活かして独立する場合「整体院」や「ストレッチ専門店」「その他予防介護事業」を選ぶパターンが多いです。もちろん他にも選択肢はあります。こちらの記事で詳しく解説しています。
【絶対ダメ】マルチ商法に手を出す
一応解説しておきますが、マルチ商法には絶対に手を出さないようにしましょう。
なぜこんなことを書くかと言うと、過去に理学療法士業界で「マルチ商法」に手を出す人が増えた時期があるからです。
2018年ごろには、なんと理学療法協会のHPで注意勧告がされたほどです。
マルチ商法は違法ではありませんが、周囲を巻き込み不幸にします。そして、数年おきに流行ります。絶対に手を出さないようにしてくださいね。
僕の友人PTもマルチに手を出してました…久々に連絡があったと思ったら…
それ以降連絡は取らないようにしています。
理学療法士が給料を上げる為に選ぶべき転職先
すでに解説した通り理学療法士の給料を上げるためには、最も効果的な方法は転職です。
収入アップを目指す方には、特に訪問看護ステーションや養成校の講師としてのキャリアが有望。
ここではそれぞれの転職先について詳しく解説します。
手堅い給料アップは訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、理学療法士が給料を上げるための効果的な選択肢のです。
訪問リハビリは通常、施設内での勤務に比べて給与が高めに設定される傾向があるからです。特に、また、訪問先でのリハビリを行うため、働く時間や場所に柔軟性があり、プライベートとの両立も図りやすくなります。
養成校の講師になる道も
キャリアを積んできた理学療法士にとって、養成校の講師も魅力的な選択肢です。
講師として働くことで一定の安定した給料を得られるだけでなく、自らの経験や知識を次世代の理学療法士に伝えるというやりがいも感じられます。この道を選ぶには、一定の臨床経験と専門知識が必要ですが、豊富なキャリアを持つ理学療法士にとっては非常に満足度の高い職場となるでしょう。
実際に養成校の講師になった知人がいますが、やはり給料はアップしたようです。
リハ専門の転職エージェントに相談すると安心
給料アップを目的に転職を考えるなら、最初のステップとしてリハ専門の転職エージェントに相談するのがおすすめです。
彼らは理学療法士の転職市場に精通しており、最適な職場を紹介してくれるからです。
それに、希望の条件が「理に適ってるか」は自分だけではわかりづらいですよね。
地方都市で、年収500万くらいの、大きな病院に転職したいな〜
仮にあなたが上記のような求人を探していたとします。めちゃめちゃ探した結果、そもそも「そんな求人は存在しない」というのが答えだったら悲しすぎますよね。
転職エージェントに相談すれば、求人の手間がはぶけます。また、予想外に好条件の職場を提案してくれる可能性もあります。また、希望する給料や勤務条件、勤務地などを具体的に伝えることで、自分にぴったりの職場を見つけやすくなります。
求職者の利用はどこも無料なので、手始めに登録してみて良いでしょう。
- PTOT人材バンク
- リハ専門で最も歴史が長い
PTOTSTワーカー - リハ専門で求人数が多い
理学療法士の給料は安いというより、伸び悩む傾向にある
今回は、理学療法士の給料が安いといわれる理由や対策についての記事でした。
ひとことで言うと、理学療法士の給料は「安い」というよりも、一定の水準から伸び悩む傾向があります。
新卒時には他の医療職種と比べても給料はそれほど低くありませんが、経験を積んでも年収が大幅に増加するわけではありません。このため、自らのキャリアパスを考え、適切なタイミングで転職やスキルアップを図ることが重要です。
特に、訪問看護や養成校の講師などの選択肢を検討することで、安定した収入を得ることができます。
これからの理学療法士には、病院等に勤める意外にもいろんな可能性があります。ブログ「リハノミライ」では、リハ職の働き方について発信中です。記事が参考になると嬉しいです。
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