理学療法士、年収低いっす。
現役で働いているPTからは上記のような声が多く聞かれます。
厚生労働省の調査によると、その年収水準は日本の平均を下回り、他の医療職とくらべても低めなのが現実。また、資格取得までの長い道のりとコストがかかる割には、キャリアを積んでも年収アップの見通しは暗めです。
この記事では、理学療法士が直面する給料の問題、そしてその解消の糸口を探るべく、さまざまな角度から細かく見ていきたいと思います。
理学療法士としての豊かなキャリアを築く一歩を踏み出すために、この記事が一助となれば幸いです。
理学療法士の年収は低いという現実について解説
理学療法士は、その専門性と責任の大きさに比べて「年収が低い」と言われることが少なくありません。
福祉の精神を持って人々の支援を行う一方、年収面で不安を感じやすいという現状があるんです。
理学療法士の年収水準は平均以下
日本の理学療法士の平均年収は一般職種の平均に比べて低めに設定されています。
専門的な学問と技術を持っていながら、その対価として得られる給料は「生活が厳しい」と感じさせるレベルに留まるケースも珍しくありません。時には実費の研修会に自腹で参加する必要などもあり、これでは生活できないという声も聞かれます。
日本平均とPTの年収比較
日本全体の平均年収 | 436万円 |
理学療法士(PT)の平均年収 | 411万円 |
医療・福祉分野の平均年収 | 401万円 |
参考:国税庁「民間給与実態統計調査結果」令和元年分 参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査:令和2年」
他の医療職と年収を比較
例えば、医師や看護師、薬剤師といった他の医療関連職種と比較すると、理学療法士の年収は明らかに低い傾向があります。
看護師とも100万円くらい違うのか…
医師の平均年収 | 1,514万円 |
看護師の平均年収 | 508万円 |
薬剤師の平均年収 | 583万円 |
理学療法士(PT)の平均年収 | 411万円 |
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査:令和2年」
PT 資格取得までのコストが高い
理学療法士になるための教育費は、多額の投資を必要とします。資格取得までに必要な費用は、学費だけで学費は400万〜600万程度のことが大半。
一人暮らしなどする場合の費用なども考えると、その負担は決して軽いものではありません。これだけの投資をした割に、希望通りの年収を実現できないことも多く、このギャップが心理的な負担にもなっていることでしょう。
新卒からの中堅までの年収変化
年代別:理学療法士の平均給料
年齢 | 月給 | 年間賞与 | 年収 |
---|---|---|---|
20~24歳 | 25.1万円 | 36.8万円 | 338.5万円 |
25~29歳 | 26.7万円 | 65.3万円 | 385.7万円 |
30~34歳 | 28.7万円 | 77.1万円 | 421.5万円 |
35~39歳 | 32万円 | 85.1万円 | 468.8万円 |
40~44歳 | 33.7万円 | 84.9万円 | 488.8万円 |
45~49歳 | 34.3万円 | 80.5万円 | 491.5万円 |
50~54歳 | 33.4万円 | 78.5万円 | 479.2万円 |
55~59歳 | 42.6万円 | 111.8万円 | 623.3万円 |
60~64歳 | 34.6万円 | 122.9万円 | 538.3万円 |
65~69歳 | 39万円 | 10.2万円 | 478.3万円 |
理学療法士がキャリアを重ねてくと、年収は一般的に少しずつ増加します。
しかし、この増加幅は決して大きいものではなく、年収でいうと数万円程度での変化。数年勤務した後でも月給が数千円しか増加しないケースもあるため、キャリアアップを図ることは容易ではありません。
経験を積むごとにスキルは向上していきますが、それが年収に大きく反映されにくいのが実情です。
知人の勤め先では、昇給が年900円しかないそうです。
※上記の表は厚生労働省の発表の下記推計データをまとめたものです(小数点以下は四捨五入しています)
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
キャリアアップによる年収アップの可能性が低い
経験を積み上げることで専門性が高まり、高度な技術を要する仕事をこなせるようになりますが、それが収入に直結するとは限りません。
キャリアアップに伴う責任の増大や業務の多様化に見合った年収アップが見込める環境は、今のところ少ないのが現実です。そのため「高度なスキルを持つ理学療法士が報われない」と感じることがあるでしょう。
政策による賃上げも期待が低い
医療分野において国や自治体からの支援が行われることもありますが、理学療法士の給料が大幅に上昇するような政策は現状では稀です。
2024年の介護報酬改定で理学療法士などの賃上げが発表されましたが、上げ幅は「0.61%」と微々たるもの。将来的に大きな改善が期待できるかは不明です。
参考:財務省「令和6年度社会保障関係予算のポイント」
理学療法士が稼ぎやすい地域はあるのか?
理学療法士の給料は地域によって差が出ることがあります。
一般的に、生活費が高い地域では給料も高めに設定される傾向。実際にどのように差がでるのかを、解説していきます。
首都圏と地方の理学療法士の年収格差
首都圏では地方に比べて生活費が高いため、理学療法士の年収もやや高い水準に設定されています。
しかし、それでも総合的な生活コストを加味すると、首都圏での「高い給料」が実際に手取り額として豊かな生活を可能にするとは言えません。
一方、地方では生活費が比較的低いことから、年収が少々低めでも安定した生活がしやすいことも事実です。
都市部と地方との間で理学療法士の給料のばらつきはあるものの、どちらが絶対的に稼ぎやすいと断言するのは難しい状況です。
例えば給料の高さを理由に「北海道のとある地域」に就職した先輩がいます。
でも実際に働いてみると「暖房代が高すぎて生活が苦しい」と言っていました。生活費を加味してなかった例ですね。
地域別の求人状況と年収の関連
地域によっては理学療法士の求人が少なく、その分給料が高い傾向にあります。一方で、求人が多い地域では競争が激しく、給料が抑えられることもあります。
したがって、求人の数と年収は密接な関係があると言えるでしょう。これから理学療法士を目指す方は、この点を考慮して就職先を選ぶことも重要です。
理学療法士が稼ぎやすい勤務先はあるのか?
理学療法士として、長期的に安定した収入を得るためには、勤務先の選択が鍵を握ります。
それぞれの職場の給与傾向について解説します。
国の運営する機関
国や公共団体が運営する医療機関や施設で働く理学療法士は、安定した給料や福利厚生を期待することができます。
これらの機関は給与体系が明確で、年功序列のアップが見込めることから、長期勤務による収入の向上も見込むことが可能です。安定を求めるなら、このような機関への就職を検討する価値があります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションでの勤務は、特定の地域を担当し、患者宅を直接訪問してサービスを提供するものです。
必要とされるスキルが高く、それに見合った報酬を得ることができるケースもあります。自己の専門性を発揮し、より良いサービスを提供することで、給与面でも大きなメリットを享受できる職場と言えるでしょう。
だんだんと需要が満たされてきて、訪看の給与バブルはやや落ち着き傾向にあります。それでも病院などよりは高め。
歩合制の整体院など
「個人経営の整体院」などは歩合制を導入しているところも多くあります。
施術の結果に応じて報酬が変動するため、スキルを上手く活用すれば高収入を得ることも夢ではありません。患者さんからの信頼を得て高い成果を出せば、それがダイレクトに収入アップにつながるでしょう。
理学療法士が年収アップする為の戦略
理学療法士の年収を上げるには明確な戦略が不可欠です。また「仕事のやりがい」と「給料」のバランスを考えることが大切になるでしょう。
以下に、着実な収入アップを目指すための方法をご紹介します。
役職につく
役職への就任は理学療法士の昇給に強く影響します。管理職や専門職としてリーダーシップを発揮したり、知見を深めたりしながら、高い給料を得ることが可能になるでしょう。
例えば、セラピーチームのリーダーや課長などのポジションは、責任の大きさと共に高収入も期待できます。チーム管理や業務改善の提案を行い、病院や施設に貢献することでポストが与えられる事例も少なくありません。
転職をする
給料が高い病院や、訪問看護師ステーションへ転職するのも一つの手です。
職場によっては年収が100万円単位でアップすることもあり、理学療法士にの年収アップ方法としては定番の方法です。
スキルを活かした副業をする
理学療法士はその専門知識を活かした副業にも挑戦することができます。
理学療法士の副業例
時給タイプの副業 | 非常勤勤務 アルバイト セミナー講師 ウェブライター |
ストック収入タイプの副業 | ブログ SNSでの発信 コンテンツ販売 YouTuber |
非常勤勤務や、臨時の講師などは手堅い収入源になりますよ。
地道に金融投資をする
資産運用もまた、理学療法士が年収を増やすための選択肢の一つ。
株や投資信託、不動産投資などを通じて、地道ながらも収入を増やす努力が求められます。リスクをしっかり把握した上で、長期的な視点を持って投資を行うことが大切です。
僕の知人も、地道に投資しています。数年で数十万単位で収益は出てるようです。
現実的な対応で理学療法士としての収入アップを!
理学療法士は専門性の高さにもかかわらず、薄給と言われるケースが少なくありません。
仕事への情熱や使命感を持ちつつ、生活の安定を求めるのは当然のことです。戦略的なキャリアプランを立て、薄給問題を乗り越えながら収入をアップさせる方法を追求しましょう。
これからの理学療法士には、普通に病院につとめる意外にもいろんな道があります。リハノミライでは「これからのリハビリ職」の働き方について発信しています。参考になると嬉しいです。
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