「理学療法士は増えすぎた」という話を聞いたことがあるでしょうか。おそらく、多くの人がそういうった話題を耳にしたことがあるでしょう。
実際どうなのかというと、PTはすでに増えすぎてるし、今後も増えるというのが実情です。これは、国や協会が発表しているデータからみてとれることです。
この記事は「現在のPTの人数」や「増えすぎた理由」などについて、詳しく知りたい方向けに書きました。
特に、これからPTを目指す方や、若手のPTさんは参考になると思います。
それでは「PTが増えすぎた」理由などについて、深堀していきましょう。
理学療法士は「増えすぎ」という事実について解説
冒頭でもお伝えしたとおり、理学療法士の人数が増え続け、供給過多の状況に直面しているのは事実です。
それでは、なぜこのような状態になり、いつ頃ピークを迎えるのでしょうか。
まずは「いつ頃から供給過多になるのか」について、厚生労働省が発表しているデータを参考に掘り下げてみましょう。
2040年には1.5倍もの供給過多になる
上記のグラフは国発表のデータで、PTの需要共有をバランスを予想したものです。
このグラフをみると、遅くとも2026年にはPTが供給過多ゾーンに入るということがわかります。PTの供給過多は、就職市場における競争の激化や待遇面での変化を引き起こす可能性があります。ヘルスケアのニーズは高まっていますが、需要と供給の差が大きすぎます。
さらに、2040年までには理学療法士は45万人を超えるという予想です。これは、1.5倍ほどの供給過多が予想されるということです。
この数値を見る限り、今後は理学療法士を取り巻く環境が厳しいものになると予想できます。
このようなデータが「理学療法士は増えすぎた」と言われる所以ですね。
参考:厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(平成31年)
2024年時点での理学療法士の総数
2024年時点で、理学療法士の資格保持者は約21万人とされています。
約10年前の2012年頃、PTの人数は10万人程度でした。理学療法士の資格が制定されたのは1963年なので、約50年をかけて、10万の資格保持者が誕生したことになります。そこからわずか10年程度で、倍の20万人になっているということです。
過去50年と比べて、5倍早いペース。これはまさに、爆増と言ってよい増え方でしょう。
なぜPTが爆発的に増えてしまったのかは、次の章で解説します。
参考:理学療法士協会「協会の取り組み」
作業療法士と比べても、増えすぎと言える?
作業療法士の人数は、2020年ごろの時点で10万人弱とされています。PTの数の半分くらいですね。
理学療法士と作業療法士はよく比較される職種ですが、人数の面で言えば、理学療法士の増加ペースが特に多いことがわかります。
参考:一般社団法人日本作業療法士協会「2019年度日本作業療法士協会会員統計資料」
なぜ理学療法士は増えすぎたのか?
理学療法士の職場は医療現場から介護施設、スポーツ分野まで幅広く、需要が高まっています。しかし、あまりに増えすぎています。その理由はどこにあるのでしょうか。主な原因を探ってみましょう。
理学療法士養成校の数が増えた
2000年(H13)頃に118校だった理学療法士の養成校数は2023年(R4)には275校。倍以上に増えています。
これは、理学療法士の需要の高まりを反映しているとも言えますが、一方で、教育の質に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
各養成校でのカリキュラム内容や実習の質にバラつきが生じ、理学療法士としての基本的な能力や知識の差が出てくることが懸念されています。
養成校の乱立により入学ハードルが下がった
理学療法士の養成校は一時期に乱立し、いまだに微増しています。これが、PTが増えすぎている主な要因です。
養成校が増えすぎたことで、入学ハードルもかなり低くなりました。高まる医療ニーズに応じて、理学療法士の人材を確保する目的があったものの、結果として「質の低下」をまねいていると言えます。
参考:理学療法士協会「養成校の推移」
国家試験の合格率も高い
養成校が増え入学ハードルが下がった理学療法士ですが、最終的な国家資格での合格率も高いです。その合格率は、毎年差はあるものの受験者の約90%は合格するという状態が続いています。
実のところ、養成校から国家資格受験自体をさせてもらえないケース(卒業試験の結果が悪かった場合など)もあり、正確な数値は未知数。ただ、PTが資格取得の合格率が高い職種であることに違いはないでしょう。
理学療法士の数はこのままどんどん増えていくのか…
今後、理学療法士の勤め先は減っていく?
理学療法士の職場は変化していますが、勤め先が必ずしも減少するとは限りません。むしろ、多様化しているのが現状です。
理学療法士、作業療法士の人数は増え続けており、そのために競争は激しくなっていますが、新しい働き方も増えており、まだみぬ領域にチャンスはあると思われます。
理学療法士の勤め先事情は、今後どのように変化するか、みていきましょう。
新卒で職場を選り好みすることは難しいかも
理学療法士の人数が増えていることは否定できません。そのため、特に新卒では「自分の理想とする職場」に就職することが以前より困難になっています。
病院やクリニック、リハビリテーション施設といった従来からの人気のある勤務地は特に競争が激しく、新卒の立場では条件の良い職場に就ける人は限られてくるでしょう。
しかし、この状況を逆手に取り、新たな領域や未開の分野への挑戦、幅広い視野を持つことで新しいチャンスが開ける可能性もあります。
独立を目指すPTも増えてますよね。
PTは転職しやすい職種…なのも過去の話
一時期は、理学療法士は転職しやすい職種として認識されていました。いえ、現在でも一般企業勤めの方と比べると、はるかに転職に対して身軽な業種です。
しかし、人数の増加により、情況が変化しています。空きポジションが少なく、また条件のよい職場への移动はより困難になっているんです。競争が激しい現在、転職を成功させるには、自分の専門性を高めるだけでなく、どのような環境でも柔軟に対応できる能力が必要です。
昔はPT免許持ってるだけで採用…って感覚の職場もありましたからね
整体・フィットネスなど新領域の模索をする人も多数
理学療法士の働き方は、病院やリハビリ施設にとどまらず、整体やフィットネス業界へと広がっています。これらの分野では、医療知識を活かしつつ、より予防的、またはパフォーマンス向上に関わるアプローチを取ることが可能です。
特に健康意識が高まる現代において、理学療法士の役割は重要です。こうした新領域では、従来の枠組みにとらわれず、革新的なサービスを提供することで、高い評価を得られるチャンスがあります。自分の専門性を生かし、新しい分野にチャレンジすることが、競争の激しい現状を打破する方法の一つです。
僕の同僚PTも、整体院を開業していますね。訪看パートとのかけもち開業をしていますね。
理学療法士増えすぎた今、どんなキャリアプランが必要か?
理学療法士が増加し続けている今、自分を他の理学療法士から差別化することが成功の鍵です。転職市場でも独自のスキルや経験をアピールすることが必要になります。
専門性を深めて特別なPTになる
理学療法士には「認定理学療法士」「専門理学療法士」という、さらに高度な資格があります。
特定の分野について、特に専門性があるPTであることを証明するものです。「理学療法士協会」によるお墨付きがつくことになるので、他のPTよりも高いスキルがあることをアピールできるでしょう。
- 脳卒中
- 神経筋障害
- 脊髄障害
- 発達障害
- 運動器
- 切断
- スポーツ理学療法
- 徒手理学療法
- 循環
- 呼吸
- 代謝
- 地域理学療法
- 健康増進・参加
- 介護予防
- 補装具
- 物理療法
- 褥瘡・創傷ケア
- 疼痛管理
- 臨床教育
- 管理・運営
- 学校教育
- 基礎理学療法
- 神経理学療法
- 小児理学療法
- 運動器理学療法
- スポーツ理学療法
- 心血管理学療法
- 呼吸理学療法
- 糖尿病理学療法
- 地域理学療法
- 予防理学療法
- 支援工学理学療法
- 物理療法
- 理学療法教育
上記ふたつの高度資格を取得するに、まずは前段階として「登録理学療法士」になる研修を受ける必要があります。この研修は最低でも5年かかり、自己研鑽へのモチベーションが必要とされます。
ただ残念ながら、認定資格を取得したからといって直接的な給与アップなどには繋がらないことが多いです。そのため「取得しても意味ない」と揶揄される側面もあります。
参考:理学療法士協会「生涯学習制度について」
転職をする
もし、他のPTよりも良い待遇を望むのであれば「転職」は堅実な方法です。
認定資格の取得のように長期的な研修を受ける必要などもありません。
例えば「訪問看護師ステーション」は人気の転職先。待遇改善を求めて、訪看に転職するPTは非常に多いです。ピーク時と比べると、徐々に高待遇なステーションは減ってきていますが、いまだに年収が100万円程アップすることもあります。
なかにはPT年収600万の訪看も
転職活動に不安があるならエージェントに相談する
転職に興味はあるけど、どこから手をつけたらいいか…
転職活動に不安があるときは、転職エージェントに相談するのが良いでしょう。転職活動が初めてだったり、面接が苦手な方にとって頼りなる存在です。
エージェントは施設と求職者をうまくマッチングしたいと思っていて、時には一般に非公開な求人を紹介してくれることもあります。そのため、待遇改善の可能性もアップします。
業界のプロに相談することは、自分の市場価値がどれくらいなのか等を知る機会でもあります。求職者は無料で利用でいるサービスなので、会員登録だけでもしておきましょう。
PTとして転職するのであれば「リハビリ職専門のエージェント」に登録するのがおすすめです。
「リハ専門」の主な転職エージェント一覧
エージェント | |||||||
公開リハ求人数 | 約3万7,500件 | 約4万5,500件 | ー | ー | ー | 約2万件 | ー |
非公開求人 | あり | あり | あり | あり | あり | あり | あり |
対応エリア | 全国 | 全国 | 関東・関西 | 関東・関西 | 全国 | 全国 | 全国 |
特徴 | リハ専門で2008年スタートの老舗 | 求人数が多いリハ専エージェント | 2020年に始まったばかりの新サービス | リハ専門で関東、関西エリアに特化 | リハ専門ではなくコメディカル特化。幅広いパイプがある | 介護領域に幅広く展開している。リハ求人数は少なめ | 介護領域に特化したエージェント。リハ求人もあり。 |
おすすめポイント | 歴史が長い。年間1万人以上が利用 | POS各職に専門のアドバイザーがいる | 実は母体が大手人材派遣。狙い目 | 対応エリア内では細かい相談ができる | 新卒・就職浪人&資格浪人者のサポート実績も多数あり | 転職後のアンケート回答で報酬が貰える | 電話、LINEで対応可能 |
公式サイト | PTOT人材バンク | PTOTキャリアナビ
| マイナビコメディカル | 介護JJ
|
「PTOT人材バンク」が、リハ専門で一番の老舗です
スキルを活かした副業をする
理学療法士の本業だけでなく、副業にも取り組むことは他のPTとの差別化になります。
医学の専門知識を活かした副業にも挑戦できるのが理学療法士の強み。場合によっては、独立になどのキャリアアップも望めます。
理学療法士の副業例
時給タイプの副業 | 非常勤勤務(PT) アルバイト セミナー講師 ウェブライター |
ストック収入タイプの副業 | ブログ SNSでの発信 コンテンツ販売 YouTuber |
非常勤(パート)勤務は手堅い収入源になりますよ。場所次第では、時給2,000円以上で働けます。
地道に金融投資をする
株式投資などの資産運用も重要です。キャリアアップとは少し違うかもしれませんが、理学療法士が年収を増やすための選択肢の一つです。
株や投資信託、不動産投資などを通じて、地道ながらも収入を増やす努力が求められます。リスクをしっかり把握した上で、長期的な視点を持って投資を行うことが大切です。
僕の友人も、地道に株式投資しています。リハ職の給与の範囲での投資でも、数年で数十万単位の利益など出てるようです。
理学療法士が増えすぎたのは事実。今後は差別化が重要!
以上、理学療法士が増えすぎた理由などについて解説しました。正直、PTは増えすぎており、今後も増えすぎていくことが予想されます。
他の理学療法士との差別化を図り、自分だけの強みを持つことが、これからのキャリアにおける最大の武器になるでしょう。
理学療法士としての道は多様で、それぞれが個性を生かした働き方を見つけることが可能です。位置づけを明確にし、独自のスキルや知識を深め、常に成長し続けることで、ライバルとの差をつけることができます。
これからの理学療法士には、病院等に勤める意外にもいろんな可能性があります。ブログ「リハノミライ」では、リハ職の働き方について発信中です。記事が参考になると嬉しいです。
コメント