訪問ST(言語聴覚士)のツバメです。
訪問リハビリの分野で、飲み込みの専門家として働いています。
主に高齢者のご自宅に伺うのですが、実は「薬がのみにくい」という相談はかなり多いんです。
そんなときに便利なのが「服薬ゼリー」。最近は、薬局やドラッグストアでも売られています。
別に、普通のゼリーでもいいんじゃない?
結論から言うと「普通の市販ゼリーで薬を飲む」ことをオススメはできません。なぜなら、薬剤の成分に影響が出る可能性があるからです。
また「薬が飲みにくい」という高齢者の方でも、飲み込み方の工夫をすることで問題解決する場合があります。そういった代償法についても解説しますので、参考にして下さい。
先に結論まとめ
- 普通のゼリーでの代用はおすすめできない
- 薬を飲むときの姿勢は「顎引き」が基本
- 実はオブラートの利用もアリ
- お医者さんに薬剤の変更も相談できる
服薬ゼリーの代用に普通のゼリーはおすすめできない
お薬飲むのって、普通のゼリーじゃダメなんですか?
在宅の現場でもよく質問されるのが「普通のゼリーでよくない?」というものです。
これに関して、普通のゼリーは「おすすめできない」というのが正直なところ。
一番は、普通のゼリーを使うと「薬剤にどんな影響があるかわからない」からです。
また、ひとくちにゼリーといっても、固さや滑りやすさは様々。ものによっては、逆に喉に張り付いてしまう可能性もあります。安易な判断は危険です。
「らくらく服薬ゼリー」などが服薬にオススメな理由
- 薬剤への影響に配慮してある(糖類、保存料、合成着色料、果汁が入っていない)
- のどに張り付きにくいように作ってある
普通の市販ゼリーがオススメできない理由
- ゼリーの栄養素が、薬剤にどんな影響を与えるかがわからない
- ものによっては滑りが悪い、張り付きやすいなど逆に飲みにくい場合も
少し話題はそれますが「ゼリーなら飲みやすいんでしょ?」という誤った認識で、某こんにゃくゼリーでの窒息事故がたくさん起きた時期がありました。
「素人判断はオススメできない」という実例です。
らくらく服薬ゼリーでも「薬が飲めない」という口コミも
ゼリーを使っても、結局うまく飲めないんですけど…!
実は、若い人も含め「ゼリーを使っても薬が飲みづらい」という口コミもありました。
ゼリーを使ってもうまく薬が飲めない場合、もしかすると「悪い姿勢で薬を飲でいる」という可能性もあります。まずは、そんな悪い姿勢になっていないかを確認しましょう。
次項で解説します。
あなたの飲み方は大丈夫?薬を飲むコツを解説
薬を飲み込む際のコツを簡潔にまとめると「薬を飲むとき上を向かない」ことです。
これは最も大事なポイント。「なんとなく飲みやすそう」というイメージで、上を向いて飲む人が結構いるんですが、解剖学的に間違いです。
解剖学など絡めて、理由を解説します。
薬を飲み込むときは顎をかるく引いた方がいい
人間がものを飲み込むときは「軽く顎を引いてる」くらいが最もよい姿勢です。
飲み込みの際には「のど仏らへん」を持ち上げる筋肉が働きます。この運動が阻害されると、飲み込みの力がうまく発揮されません。
そして、この筋肉が最も効率よく働くのが「軽く顎を引いた姿勢」なんです。逆に、上を向いてしまうと飲み込みの筋肉が阻害され、ムセやすくなります。
特に高齢者は「飲み込みの筋力」が低下しているケースが多いので、この傾向は顕著になります。
試しに上を向いて唾を飲んでみると、かなり「ゴックン」が大変なことがわかると思います。
※健康な人でもムセたりして危険です。試す際はご注意を!
訪問リハでよくある服薬指導例(4コマ漫画)
僕が働いている訪問リハでも「薬が飲みにくい」という相談に対して「顎をひきましょう」という指導のみで問題解決したケースがあります。
そのときの様子を漫画にしてみました。
値段を考慮するとオブラートを使うのもアリ
服薬ゼリー毎回買うと、結構お金がかかるな…と思う方は、昔ながらの「オブラート」を使うのもアリです。
服薬ゼリーと比べて、オブラートは圧倒的に安いです。ただしゼリーと違って、オブラートは水でふやかして使うなど手間がかかります。
でも実は、漢方の顆粒などはオブラートの方が飲みやすいという方もいます。
「服薬ゼリー」と「オブラート」のコスト比較 | 値段 |
---|---|
服薬ゼリー「スティックタイプ」 | 6本で300円位 |
服薬ゼリー「チューブタイプ」 | 12回分で300円位 |
オブラート | 100枚で300円~位 |
「オブラートでの服薬」について、薬剤師さん解説の動画も貼っておきます
「らくらく服薬ゼリー」と「お薬のめたね」は何が違う?
ドラッグストアなどの売り場でよく目にする服薬ゼリーは「らくらく服薬ゼリー」と「お薬のめたね」という2商品。どちらもも龍角散の製品です。
実は、大きな違いは「大人向け」か「子供向け」かというだけです。
大人や高齢者で「薬の飲み込みが苦手な人」を想定。なので、味も唾液が出やすいレモン味。
「薬を飲むのを嫌がる子供」を想定してるので「薬を見えなくする」「苦味を消す」という用途での色や味付け。
薬が飲みにくいなら、薬剤変更も相談しましょう
実はお薬には、同じ作用で別の種類があることも多いです。
介護の現場では「錠剤が大きくて飲みにくい」という理由で、似たような別のお薬に変えることも普通にあります。
なので「もう少し飲みやすいお薬はありませんか?」とお医者さんや薬剤師さんに相談するとこも大事です。
また、錠剤は薬局にお願いして「薬を砕いてもらう」などの対応も出来ます。そういった対応でも、ずいぶんと薬の飲みやすさは変わってきます、
薬を安心して飲める方法は色々ある
以上「服薬ゼリーの利用」と「薬を飲み込むコツ」について解説しました。
特に、「軽く顎を引いて飲み込む」というのは大事なコツです。
実際に「服薬ゼリー」と「顎を引いて飲む」併せて実践すると、ものすごく飲みやすくなるケースがあります。
お医者さんに相談したりもしながら、日々の服薬ストレスを減らせるようにしていきましょう。