とろみ剤は、高齢者や飲み込みが難しい人にとって安全に飲食をサポートする便利なアイテム。正しく利用すれば、ムセを軽減し誤嚥性肺炎の予防に役立ちます。
ただし、使い方を誤ると逆に危険が増す場合もあるんです。例えばとろみが付きすぎて飲みづらくなったり、ダマが多いことで誤嚥のリスクが高まることもあるからです。
この記事では、言語聴覚士である筆者がとろみ剤の正しい使い方を分かりやすく解説します。とろみ剤を上手に使いこなして、大切な人の健康を守りましょう。
とろみ剤利用のメリットとデメリット

とろみ剤は、飲み込みが困難な方にとっては役立つ道具。誤嚥のリスクも減らすアイテムです。
しかし、メリット(良い点)だけでなくいくつかのデメリット(悪い点)も存在します。
とろみ剤利用のメリット

とろみ剤を利用すると、下記のようなメリットがあります。
とろみ剤利用のメリット
- 水分でムセにくくなる
- 誤嚥性肺炎の予防に期待できる
水分でムセにくくなる

正しいとろみ付けを行うことで、飲み物や汁物を摂取するときにムセにくくなります。
これは、飲み物が喉を通る際のスムーズさが増し、液体がまとまった状態でゆっくりと喉を通過するようになるためです。
逆にいうと、サラサラの水分というのは喉を通過するスピードが速く、バラバラに散らばる性質があります。この特徴により、気道に侵入しやすい(ムセやすい)のです。
性質 | サラサラの水分(とろみなし) | とろみの水分 |
---|---|---|
流れるスピード | 早い | ゆっくり |
流れる性質 | 散らばりやすい | まとまりやすい |
飲みこんだ後 | 喉に残りやすい | 喉に残りにくい |
気道ではなく食道へ、きちんと水分が流れることになります。これは飲み込みに困っている人にとって、大きな安心材料ですね。
誤嚥性肺炎の予防に期待できる
とろみを適切に利用することで、誤嚥性肺炎の予防にも貢献できます。
誤嚥性肺炎は、飲み物や食べ物が誤って気管に入り、肺に達することで起こります。肺に異物が入ってしまい、本人の抵抗力も低い状態だと肺炎に発展してしまうんです。
誤嚥性肺炎は高齢者に多く見られる症状です。とろみ剤を使うことによって、誤嚥自体が予防できれば、肺炎の危険も軽減できます。
とろみ剤利用のデメリット

とろみ剤を利用するには、下記のようなデメリット(よくない点)もあります。
とろみ剤利用のデメリット
- 逆に誤嚥しやすくなる場合もある
- 飲み物の味、質感が変わる
- 時間・金銭的コストがかかる
- 作り置きしすぎると雑菌が増える可能性も
逆に誤嚥しやすくなる場合もある
最適なとろみ加減を得るためには、ある程度の慣れとコツが必要です。
ダマになってしまったり、思った以上にドロドロになっていると、逆に飲みづらさが増してしまうことも。そうなると、誤嚥の可能性も上がってしまいます。
安定したとろみ剤の利用には、粉の量など決め正しい使い方をすることが大事です。
ちなみに、ハンドミキサー等を利用するとかなり安定してとろみが付けられます。かくはん力が強いのでダマにもなりにくいですよ。別記事で解説してますので参考にして下さい。
正しいとろみ付けの方法等を紹介した記事
飲み物の味、質感が変わる
とろみ剤を使用すると、どうしても飲み物の味や質感が変わってしまいます。特に純粋な風味を楽しみたい人にとって、これは大きなデメリットかもしれません。
最近のとろみ剤は進歩していて、味の変化が少なくなってはいます。ただ質感が変わると、味の感じ方がどうしても変わってしまいます。
飲む人が「あまり美味しくないなぁ」と思うだけならまだ良いとしても、それが原因で水分摂取量が減ってしまうとよくありません。

適度なとろみ濃度を、話し合いながら決める必要がありますね。
時間・金銭的コストがかかる
とろみ剤はどうしてもコストがかかります。時間的にも、金銭的にもです。
しかし、安全に配慮した結果、誤嚥や誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができるのなら、そのコストも納得できるものだと思います。
一度誤嚥性肺炎になると、一気に体力が落ちてしまうケースもあります。繰り返すとなおさらです。とろみ剤を利用することで肺炎が予防できるなら、決してコストは高くないはず。
大きな袋タイプだとお得です
作り置きしすぎると雑菌が増える可能性も
とろみ剤を一度にたくさん作っておくと便利です。でも、あまり長く置いてしまうと雑菌が増えてしまいます。
特に温かい時期には、菌の繁殖が早いから注意が必要です。だから、できるだけ都度作って新鮮なものを使うのがおすすめです。
それでも作り置きしたい場合は、冷蔵保存をしっかりして、早めに使い切るようにしましょう。



僕が通っている在宅介護の現場では、とろみ剤の作り置きは「多くても1日分まで」と言われることが多いです(冷蔵保存で)
状況により変化しますので、あくまで参考程度ですが…
デメリットに注意しながら、上手にとろみ剤を使いましょう


とろみ剤は飲み込みが難しい方に大変有用です。できれば利用すべき対応方法です。正しいとろみ付けができれば、誤嚥を予防することができ誤嚥性肺炎のリスクも軽減されます。
一方で、とろみ剤のデメリットにも注意が必要。ダマができると誤嚥のリスクが高まるほか、とろみ濃度が濃すぎると飲み込みが逆にしづらくなります。また、水分摂取量が減る可能性や、作り置きでは雑菌が増える危険性も存在します。
とろみ剤の利用を検討している方は、ケアマネージャーなどを通じて医師や言語聴覚士に相談することをお勧めします。飲み込みに困っている人は、ぜひ正しい知識を活用して、安全で快適な毎日を送りましょう。